Description of a work (作品の解説)
2008/12/02掲載
Work figure (作品図)
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お猿の彫刻家(彫刻)

 (Le singe sculpteur) 1709-10年頃
22×21cm | 油彩・画布 | オルレアン美術館

18世紀フランスを代表する巨匠アントワーヌ・ヴァトーの興味深い作品『お猿の彫刻家(彫刻)』。残されている古版画から、『お猿の画家』という作品(現在は消失)との対画関係にあったことが判明している本作は、猿が鑿(のみ)と槌(つち)を持ち彫刻を制作する姿を描いた作品で、本作自体も損傷が著しく多くの加筆が認められる点や、古版画と同構図である点などから一般的にはヴァトーの真筆ではなく、後世の画家による模作と考えられている。本主題≪猿の彫刻(猿の人真似)≫は絵画や彫刻などの諸芸術が自然の模倣であるという観念(自然を崇高とし芸術を卑下する考え)から発生した主題であるが、本作に描かれる猿をヴァトーは自身と同一視していたとの解釈も唱えられている。画面中央に描かれる帽子を被った猿は左手で鑿(のみ)を若い女の胸像(彫刻)の首もとに当て、右手の槌(つち)を振るおうとしている。その表情はまさに彫刻家が作品に対して向かうかの如く真摯な表情を浮かべており、猿=ヴァトーとする解釈に説得力を持たせている。さらに彫刻の台の近くや猿の後ろには様々な道具が置かれており、この猿の仕事への積極性や精力的な取り組みを強調している。様々な時代で手が加えられておりヴァトー作品としての真贋は非常に曖昧な本作ではあるものの、描かれる対象の実直な捉え方や主題そのものへのアプローチは画家の作品の中でも特に注目すべき内容であり、ヴァトーの作品を考察する上でも欠かせない作品に位置付けられている。


【全体図】
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真摯に彫刻と向き合う猿の姿。本主題≪猿の彫刻(猿の人真似)≫は絵画や彫刻などの諸芸術が自然の模倣であるという観念(自然を崇高とし芸術を卑下する考え)から発生した主題であるが、本作に描かれる猿をヴァトーは自身と同一視していたとの解釈も唱えられている。



【真摯に彫刻と向き合う猿の姿】
彫刻の首もとへ当てられる鑿(のみ)。様々な時代で手が加えられておりヴァトー作品としての真贋は非常に曖昧な本作ではあるものの、描かれる対象の実直な捉え方や主題そのものへのアプローチは画家の作品の中でも特に注目すべき内容である。



【彫刻の首もとへ当てられる鑿(のみ)】
猿が身に着ける前掛け。残されている古版画から、『お猿の画家』という作品(現在は消失)との対画関係にあったことが判明している本作自体も損傷が著しく多くの加筆が認められる点や、古版画と同構図である点などから一般的にはヴァトーの真筆ではなく、後世の画家による模作と考えられている。



【猿が身に着ける前掛け】

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