Description of a work (作品の解説)
2008/08/29掲載
Work figure (作品図)
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男と女

 (L'homme et la femme) 1900年
115×72cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)

ナビ派の画家ピエール・ボナールが1900年に手がけた画家初期の代表的作品『男と女』。性行為(性交渉)をおこなう、又はおこなった後の情景を如実に、そしてあからさまに観る者へ感じさせる本作は、画家の作品の中でも男性の全身裸体が描かれた極めて珍しい作品としても知られている。本作に登場する男女に関して、夢想(憂鬱)に耽るようにベッドに座る女性は明らかに、当時画家と恋人(愛人)関係にあったマリア・ブールサン(通称マルト)の面影が残されており、また服を着ている(又は脱いでいる)のであろう裸体で立つ男性はボナール自身の姿であると考えられている。このような直接的な性の暗示は画家の作品としては珍しい部類に属するが、何よりも本作で最も注目すべき点は(本作を)より深遠で精神的緊張感を張らせている画面中央に描かれた衝立である。唐突に、かつ忽然と画面中央へ配されるこの衝立は本作で空間的・光彩的な分離の役割を果すだけではなく、男女間の精神的な分離の役割、ひいては登場人物(男と女)の孤立を明確に示す効果も担っている。画面左側に描かれる明瞭な光に包まれた気だるそうな裸体の女性はベッドの上でやや俯き、男に対する無関心を示している。さらに女性の下部には2匹の猫が描き込まれており、女性の孤独感を強調させている。画面右側に描かれる裸体の男性は衝立によって光が遮られ暗く沈んだ影が全身を覆っている。この男女の光と影の描写的対比も衝立によって生み出されているものであり、そのような点でも本作における衝立の重要性は特筆に値するものである。また本作のような≪男≫そして≪女≫の精神的、又は天命的な本質への深い洞察とその描写には、しばしば同時代の画家エドヴァルド・ムンクの世界観との関連性が指摘されている。


【全体図】
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深い影に沈む裸体の男性。性行為(性交渉)をおこなう、又はおこなった後の情景を如実に、そしてあからさまに観る者へ感じさせる本作は、画家の作品の中でも男性の全身裸体が描かれた極めて珍しい作品としても知られている。



【深い影に沈む裸体の男性】
気だるそうに俯く裸体の女性。本作に登場する男女に関して、夢想(憂鬱)に耽るようにベッドに座る女性は明らかに、当時画家と恋人(愛人)関係にあったマルトの面影が残されており、また裸体で立つ男性はボナール自身の姿であると考えられている。



【気だるそうに俯く裸体の女性】
重要な役割を担う画面中央の衝立。唐突に、かつ忽然と画面中央へ配されるこの衝立は本作で空間的・光彩的な分離の役割を果すだけではなく、男女間の精神的な分離の役割、ひいては登場人物(男と女)の孤立を明確に示す効果も担っている。



【重要な役割を担う画面中央の衝立】

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