Description of a work (作品の解説)
2008/06/07掲載
Work figure (作品図)
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浴槽の裸婦

 (Nu Dans le bain) 1936-37年
93×147cm | 油彩・画布 | プティ・パレ美術館(パリ)

20世紀前半のフランス美術界を代表する親密派(アンティミスム)画家ピエール・ボナールが晩年期に手がけた生涯随一の傑作『浴槽の裸婦』。本作はボナールの最も重要な霊感源(着想源)のひとりであった最愛の妻マリア・ブールサン(通称マルト)をモデルに、浴槽(バスタブ)の中に横たわる裸婦を描いた作品である。画家は約10年ほど前に、やや水平が強調されるもののぼぼ同様の構図で同画題の作品『浴槽』を手がけているが、ボナール自らの言葉によれば、本作の高位置からの視点による独特の構図展開は、画家自身、それまでの画業の中で最も難しいものであったと述べている。本作で最も特徴的かつ、最も観る者の眼を惹きつけるのは、南仏ル・カンネに拠点を置き、さらに晩年期へ向かうに従い奔放性と非現実性が増していった鮮やかな色彩の表現にある。画面中央に配される浴槽とそこへ横たわる裸体のマルトは、腹部・下腹部では肌の色を思わせる赤味が差すものの、下半身や胸部は蒼白く輝くかのような色彩が用いられている(それはマルトを中心に手前と奥で明確に分けられる水面の色彩と不思議な統一感を感じさせる)。さらに画面上部の壁の色彩はさらに自由奔放であり、印象主義の手法にも通じる独特な筆触によって表現される、光の微妙な加減により変化する色彩の多様性・変幻性と、隣り合う色調の塊の対比はある種の抽象性すら感じさせる。また『浴槽』と比較し、さらに進んだ平面性や色彩による空間構成性、画面下部の浴室内に敷かれたタイルの単純・文様化された表現も特に注目すべき点である。

関連:1925年制作 『浴槽』


【全体図】
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浴槽の中に横たわる裸婦の姿。本作はボナールの最も重要な霊感源(着想源)のひとりであった最愛の妻マリア・ブールサン(通称マルト)をモデルに、浴槽(バスタブ)の中に横たわる裸婦を描いた作品である。



【浴槽の中に横たわる裸婦の姿】
光の微妙な加減により変化する色彩の多様性。印象主義の手法にも通じる独特な筆触によって表現される、光の微妙な加減により変化する色彩の多様性・変幻性と、隣り合う色調の塊の対比はある種の抽象性すら感じさせる。



【光の微妙な加減により変化する色彩】
浴室内に敷かれるタイルの鮮やかな色彩。画家はやや水平が強調されるもののぼぼ同様の構図で同画題の作品『浴槽』を約10年前にも手がけているが、ボナール自身、本作の高位置からの視点による独特の構図展開は、それまでの画業の中で最も難しいものであったと述べている。



【敷かれるタイルの鮮やかな色彩】

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