Description of a work (作品の解説)
2008/06/26掲載
Work figure (作品図)
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田舎の食堂

 (Salle à manger à la campagne) 1913年
168×204cm | 油彩・画布 | ミネアポリス美術研究所

親密派(アンティミスム)の大画家ピエール・ボナールの重要な転機となった代表作『田舎の食堂』。本作は画家が1912年に購入したセーヌ渓谷近郊のヴェルノネの自宅の一室から見た眺望を描いた作品である。この頃の画家は、当時、新たな芸術として俄然注目されていたパブロ・ピカソ、ジョルジュ・ブラックが創始したキュビスムや、アンリ・マティスに代表されるフォーヴィスム(野獣派)などの台頭によって自身の表現に流行的な遅れを感じ焦燥していたが、本作では己の求める絵画表現の核心(本質)に迫り、その為に必要な表現手法の模索(探求)が示されている。それまでのボナールの作品は色彩を最も重要視し、そこに発生する偶発的な色彩効果を絵画表現の核としていたものの、本作では絵画の基礎とも言える形態描写≪デッザン≫への取り組みと、それによる堅固な構図の構成を感じることができる。画面中央の開けられた扉を中心に、画面右部分には明瞭な陽光によって光り輝く屋外の風景が、画面右側には近景として室内の様子が描かれており、明確かつ等分に隔てられたふたつの空間を開放された扉が過不足無く繋いでいる。入念なデッザンによって的確かつ計算的に描かれた構成要素とその配置は、このふたつの空間、近景として描かれる部屋の壁のやや重く強い赤味を帯びた色彩と、中〜遠景として描かれる庭先の黄色味を帯びた緑色の明るさを存分に感じさせる色彩との対比をより効果的なものとしている。さらにそれは赤い壁(暖色)と画面手前の薄青色の円卓(寒色)との色彩的対比にも同様のことが言える。色彩の多様性という点ではそれまでのボナールの絵画様式を踏襲したものであるものの、この計算された要素の配置や配色は画家が本作で新たに見出した最も重要な特徴であり、これはその後のボナールの作品制作の重要な転機となった。


【全体図】
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窓辺に寄り掛かる赤い衣服を着た人物。それまでのボナールの作品は色彩を最も重要視し、そこに発生する偶発的な色彩効果を絵画表現の核としていたものの、本作では絵画の基礎とも言える形態描写≪デッザン≫への取り組みと、それによる堅固な構図の構成を感じることができる。



【窓辺に寄り掛かる人物】
やや重く強い赤味を帯びた壁の色彩。入念なデッザンによって的確かつ計算的に描かれた構成要素とその配置は、このふたつの空間、近景として描かれる部屋の壁のやや重く強い赤味を帯びた色彩と、中〜遠景として描かれる庭先の黄色味を帯びた緑色の明るさを存分に感じさせる色彩との対比をより効果的なものとしている。



【やや重く強い赤味を帯びた壁の色彩】
薄青色の円卓の上に置かれた食事。色彩の多様性という点ではそれまでのボナールの絵画様式を踏襲したものであるものの、この計算された要素の配置や配色は画家が本作で新たに見出した最も重要な特徴であり、その後のボナールの作品制作に大きな影響を与えた。



【薄青色の円卓の上に置かれた食事】

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