Description of a work (作品の解説)
2008/09/17掲載
Work figure (作品図)
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田園交響曲(田舎)

 (La Symphonie pastorale) 1916-20年
130×160cm | 油彩・画布 | ベルネーム=ジュヌ・コレクション

親密派の画家ピエール・ボナール作『田園交響曲(田舎)』。本作は第一次大戦中となる1916年から1920年にかけて制作された、画商ベルネーム・ジュヌ家がパリに所有するアパルトマンの装飾パネル4連作品の中の1点である。この装飾パネルは本作『田園交響曲(田舎)』と『地中海』『地上の楽園』『グランド・ジャット島の労働者たち』から構成される作品群で、各パネルが古代と現代、都会と田舎、北と南など主題的な対比が示されているのが大きな特徴である。本作『田園交響曲』は田舎の牧歌的な真夏の情景を色彩豊かに描いた作品で、この頃の画家の様式的特徴が良く現れている。画面右側前景には牡鹿を愛撫する女性が2人描かれており、自然と観る者に古代的な神話主題『ディアナとアクタイオン(女神ディアナの水浴姿を目撃してしまったアクタイオンが怒り狂ったディアナに牡鹿へと姿を変えられてしまうという逸話)』を連想させる(なおこの牡鹿についてはフランス王家の紋章との関連性も指摘されている)。また左側前景には雌牛の乳を搾る農婦が配されおり本作に牧歌的な様子と雰囲気を付与しているほか、画面中央では幼児が猫と戯れる姿や家畜(馬)を牽く農夫の姿が情感豊かに描かれている。さらに質量感に溢れた木々が画面の端を(あたかも額縁のように)囲む中、画面の中央には幻想的な風景(遠景)が広がっており、観る者に心地よい開放感を感じさせる。本作の強烈で鮮明な色彩による理想郷的な風景表現と場面構成は、アダムとエヴァを連想させる『地上の楽園』と共にボナールの古典的要素を含んだ作品展開におけるひとつの頂点を示しており、画家の代表作として今なお観る者を魅了し続けている。

関連:シカゴ美術研究所所蔵 『地上の楽園』


【全体図】
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牡鹿の角を触るふたりの女性。画面右側前景に描かれる女性2人と牡鹿の姿は、自然と観る者に古代的な神話主題『ディアナとアクタイオン(女神ディアナの水浴姿を目撃してしまったアクタイオンが怒り狂ったディアナに牡鹿へと姿を変えられてしまうという逸話)』を連想させる。



【牡鹿の角を触るふたりの女性】
桃色の色彩で表現される雌牛。本作は画商ベルネーム・ジュヌ家がパリに所有するアパルトマンの装飾パネル4連作品の中の1点で、この装飾パネルは本作『田園交響曲』と『地中海』『地上の楽園』『グランド・ジャット島の労働者たち』から構成される。



【桃色の色彩で表現される雌牛】
開放感に溢れた幻想的な風景。本作の強烈で鮮明な色彩による理想郷的な風景表現と場面構成は、アダムとエヴァを連想させる『地上の楽園』と共にボナールの古典的要素を含んだ作品展開におけるひとつの頂点を示している。



【開放感に溢れた幻想的な風景】

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