Description of a work (作品の解説)
2008/09/19掲載
Work figure (作品図)
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ミューズたち(ムーサたち、公園、樹の下で)


(Les Muses) 1893年
171.5×137.5cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)

ナビ派随一の理論家モーリス・ドニ若き日の代表作『ミューズたち(ムーサたち)』。かつては公園、樹の下とも呼称された本作は、19世紀フランスを代表する装飾画家ピュヴィ・ド・シャヴァンヌが手がけたリヨン美術館階段室の壁画装飾『芸術とミューズが愛する聖なる森』に着想を得て制作された作品で、画家が幼少期を過ごしたパリ郊外サン=ジェルマン=アン=レにある栃の木(仏名マロニエ)が茂る城の林(テラス)を舞台に、神話において太陽神アポロンに付き従い諸芸術を司る9人の詩神ミューズ(「美声」のカリオペ、「名声・歴史・」のクレイオ、「舞踏」のテルプシコレ、「喜び・音楽」のエウテルペ、「豊穣・歓声・喜劇」のタレイア、「歌・悲劇」のメルポメネ、「愛・叙事詩」のエラト、「多歌声」のポリムニア、「天空」のウラニアの9名でムーサとも呼ばれる)たちが優美にひと時を過ごす情景が描かれている。9人のミューズらは全て画家の愛妻マルトをモデルに描かれているが、本作で描かれる4つの集団に分けられたミューズたちは古典絵画のような神話的な衣服を身に纏う姿ではなく、現代的で様式化された衣服を身に着けている。このように神話など古典主題に典拠を置きながらも、日常的な現代性を感じさせる絵画展開はモーリス・ドニの大きな特徴である。また表現様式においても、明確な輪郭線で囲まれた対象の内部へ、平面的かつ装飾的な色彩を乗せる手法は画家が芸術雑誌「芸術と批評(アール・エ・クリティック)」へ寄稿した論文に記される「絵画とは本質的には一定の秩序の上に集められた色彩で覆われる平面である」の実践的展開であり、特に極めて様式化された装飾性豊かな栃の木(マロニエ)の葉の表現や、柔らかい曲線で流々と描かれるミューズらと太く垂直に伸びる樹の幹の安定的な展開との絶妙な対比などは、ドニの芸術思想の典型例として広く知られている。


【全体図】
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椅子に腰掛け静かに鉛筆を削るミューズ。9人のミューズらは全て画家の愛妻マルトをモデルに描かれているが、本作で描かれる4つの集団に分けられたミューズたちは古典絵画のような神話的な衣服を身に纏う姿ではなく、現代的で様式化された衣服を身に着けている。



【静かに鉛筆を削るミューズ】
明確な輪郭線で囲まれた対象の内部へ、平面的かつ装飾的な色彩を乗せる手法。これは画家が芸術雑誌「芸術と批評(アール・エ・クリティック)」へ寄稿した論文に記される「絵画とは本質的には一定の秩序の上に集められた色彩で覆われる平面である」の実践的展開である。



【明確な輪郭線で囲まれた対象】
極めて様式化された装飾性豊かな栃の木(マロニエ)の葉。この独自的な表現や、柔らかい曲線で流々と描かれるミューズらと太く垂直に伸びる樹の幹の安定的な展開との絶妙な対比などは、ドニの芸術思想の典型例として広く知られている。



【様式化された装飾性豊かな栃の葉】

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