Description of a work (作品の解説)
2008/12/17掲載
Work figure (作品図)
■ 

天国

 (Le Paradis) 1912年
49×74cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)

フランス象徴派を代表する画家モーリス・ドニの色彩に溢れた傑作『天国』。1908年に画家がブルターニュ北海岸沿いのベロス=ギレックに購入した別荘≪シランシオ≫で制作された本作は、同別荘から海岸を眺めた情景を描いた作品である。画面上部には高台に建てられた別荘シランシオから俯瞰(見下ろ)したベロス=ギレックの海面が配されており、画面手前には美しく紫陽花が咲く別荘の庭先が描かれている。さらに注目すべきはその紫陽花の庭で無邪気に遊びまわる子供たちと多くの天使らの姿である。ある者は天使に腕を引かれ、ある者は庭に咲く草木に手を伸ばし、さらに肩を組んでいる一組の天使らに駆け寄る子供の姿も確認することができる。毎年、夏になると制作活動のために家族を連れてシランシオへ訪れていたドニにとって、本作に描かれる幸福的な光景はシランシオの体験の心象そのものであり、だからこそ画家自身も名称として『天国』と付けられたのであろう。本作には画家の至福そのものが描かれているのであり、ドニの作品の中でも特に親密派(アンティミスム)的な特徴が色濃く反映された作品としても認知されている。また表現手法に注目しても非常に明度を感じさせる輝くような色彩を大胆に面化しながらも柔和で単純な表現に陥ることなく見事な強弱感覚によって全体を引き締めているほか、画面構成に目を向けてみても、よく計算された俯瞰的構図と、構成要素の対角線的配置を用いることによって画家独特の理論的近代性を感じることができる。


【全体図】
拡大表示
手を取り庭先を駆け回る天使たち。1908年にモーリス・ドニがブルターニュ北海岸沿いのベロス=ギレックに購入した別荘≪シランシオ≫で制作された本作は、同別荘から海岸を眺めた情景を描いた作品である。



【手を取り庭先を駆け回る天使たち】
庭に咲く色鮮やかな花々。表現手法に注目しても非常に明度を感じさせる輝くような色彩を大胆に面化しながらも、柔和で単純な表現に陥ることなく、見事な強弱感覚によって画面全体を引き締めている。



【庭に咲く色鮮やかな花々】
画面上部に配されるベロス=ギレックの海面。毎年、夏になると制作活動のために家族を連れてシランシオへ訪れていたドニにとって、本作に描かれる幸福的な光景はシランシオの体験の心象そのものである。



【ベロス=ギレックの海面】

Salvastyle.com 自己紹介 サイトマップ リンク メール
About us Site map Links Contact us

homeInformationCollectionDataCommunication
Collectionコレクション
作品イメージ