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十字架昇架 (The Raising of the Cross) 1630-1631年
345×280cm | 油彩・画布 | 聖母教会(コーリック) |
17世紀フランドル絵画の巨匠ヴァン・ダイクの代表的な宗教画作品のひとつ『十字架昇架』。コーリックの聖母教会の司祭ロジェ・ブラィエから同教会の祭壇画として注文され制作されたと推測される本作に描かれるのは、ユダヤの民を惑わしたとの罪から、受難者イエス自らが担いゴルゴダの丘に運ばされた十字架に磔られ、ローマ兵士らによって樹立される場面≪十字架昇架≫で、本作の画面に対しほぼ対角線上に≪十字架に磔られる受難者イエス≫を配する構図や、深く強い陰影を用いた劇的な感情表現、力強い肉体描写による激しい運動性などは、師ルーベンスによる傑作『キリスト昇架』からの直接的な影響が指摘されている。しかしルーベンスによる『キリスト昇架』が受難者イエスを英雄的に扱う記念碑的な特徴を示すのに対し、本作には受難者イエスの内面的な性格を重視した、精神性の深い表現が用いられている点が大きく異なっている。なお本作を制作する為にダイクが描いた油彩によるスケッチ画が残されている。
関連:ピーテル・パウル・ルーベンス作『キリスト昇架』
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