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大天使ミカエルと叛逆天使たち 1650-1655年頃
(Arcangelo Michele e gli angeli ribelli)
419×213cm | 油彩・画布 | ウィーン美術史美術館 |
17世紀ナポリ派の巨匠ルカ・ジョルダーノが手がけた代表的な作品のひとつ『大天使ミカエルと叛逆天使たち』。制作経歴の詳細は不明であるが、1796年にウィーンのイタリア国立教会ミノリテン・キルヘから王立コレクションを経て、美術史美術館に所蔵されることになった本作に描かれる主題は、イスラエルの守護聖人であり、悪魔や龍など邪悪なるものと対峙し、神の剣を振るってきた神の使徒である大天使ミカエルが、叛逆をおこした天使等(サタンやベリアル)を退治する場面≪叛逆天使たちを地獄へと突き落とす大天使ミカエル≫で、フセペ・デ・リベーラに学んだ規律的な写実性と厳しい明暗法によるカラヴァッジェスキ派的な表現手法と、この頃おこなったローマ、フィレンツェ、ヴェネツィアへの旅行で得た演劇的な場面描写と豊かで光を帯びた色彩を融合させ、本主題の教義である偉大なる父なる神の勝利と邪悪なる者の末路を見事に表現している。本主題≪叛逆天使たちを地獄へと突き落とす大天使ミカエル≫は、宗教改革以来最も重要視された主題のひとつで、対抗勢力に対する勝利と失墜を意図とし描かれたと解釈されている。本作で大天使ミカエルは神の力を誇示するかの如く、光と威厳に満ちた堂々たる姿と動作で手にする剣を振るっている。また突き落とされる叛逆天使らの表情は苦悶と恐怖に満ちており、深い陰影による光と影のコントラストが、それらを一層際立たせているのである。
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