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豊穣の女神ケレスへの奉献 (Ofrenda a Ceres) 1622年頃
165×112cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド) |
17世紀フランドルの画家ヤーコブ・ヨルダーンス初期における名画『豊穣の女神ケレスへの奉献』。18世紀スペイン王室コレクションに由来する本作に描かれるのは、神話上で豊穣を司る女神ケレスとその恵みを称える人々≪豊穣の女神ケレスへの奉献≫で、本作と同じくプラド美術館に所蔵されるルネサンス芸術ヴェネツィア派の巨匠ティツィアーノの傑作『ヴィーナスへの捧げもの』に発想を得て制作されたと考えられている。画面上部では美しい赤色の衣を纏った豊穣の女神ケレスが大地の実りである果実を抱き観者に視線を向けている。一方、画面中央から下部に配される農夫婦や老夫婦、子供、牛や馬などの家畜は人間における人生の周期と生活を表し、老若男女問わず全ての人々が豊穣の女神を称え奉献している。このような神話上の人物を用いた寓意的作例においても、ヨルダーンスの最も大きな特徴であるダイナミックに構成された構図と強い風俗性が存分に示されているほか、鮮明で輝きを放つ光彩表現を用いていることから一部からはイタリア・バロックの大画家カラヴァッジョの影響が指摘されているも、これはフランドル絵画の伝統に基づく表現だとする説が最も有力で通説となっている。
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