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ロザリオの聖母 (Virgen del Rosario)1650-1655年頃
166×125cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド) |
セビーリャ派を代表する画家バルトロメ・エステバン・ムリーリョの特徴がよく示される代表的な聖母子画作品のひとつ『ロザリオの聖母』。本作の主題は、ドメニコ修道会の創始者聖ドミニクスが祈祷中に聖母マリアが現れロザリオを与えたとの伝承より、ドメニコ修道会の象徴する代表的な聖母子像とされ、ムリーリョが最も好み描いた主題でもある≪ロザリオの聖母≫を描いたもので、暗中に射される光と影の厳しい明暗対比によって表現された実直な表情を浮かべる聖母マリアと、その聖母の腕に抱かれる幼いイエスの神々しさすら感じられる高貴な表現は、ムリーリョの柔らかく繊細な描写による人物の内面を深く描く独自の様式を存分に示している。この主題となる聖母子とロザリオの他は殆ど構成要素を持たないのが本作の大きな特徴であるが、このような構成であるからこそ、ムリーリョの内面を深く描く人物表現が如何なく発揮され、同時にそれは人々に誠実に伝わる効果も生み出しているのである。それであるからこそ、故郷セビーリャを中心に圧倒的な人気を得て、19世紀末期にベラスケスが再評価されるまで国内外でスペイン最大の画家として名を馳せるほどの名声を得るに至ったのである。
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