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十字架を担う聖アンデレ
(San Andrés con La Cruz) 1630-1632年頃
123×95cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド) |
17世紀ナポリ派の始祖的存在にしてスペイン出身の偉大なる巨匠フセペ・デ・リベーラの画業において、中期を代表する重要な基準作のひとつ『十字架を担う聖アンデレ』。本作に描かれるのは、キリスト十二弟子のひとりで、兄であり十二弟子の筆頭である聖ペテロと共に主イエスに選ばれた最初の弟子である≪聖アンデレ≫で、リベーラ独自の様式を最も良く示している単身聖人像として広く認知されている。兄である聖ペテロがローマやスペインを中心としたカトリックに崇拝されたのに対し、聖アンデレは東方正教会(ギリシア正教)の地であるギリシアやロシアで特に崇拝されていた聖人であるが、リベーラやセビーリャ派の大画家ムリーリョを始めとした画家たちは聖アンデレを主題とした傑作を数々残している。主の昇天後、複数の地を経て住したペロポネッソス半島パトラス市のローマ総督アイギアスの妻マクシミリアの病を癒し改宗させたことから総督の怒りを買い、笞打ち刑に加え、X形十字架へ逆さ吊りの刑に処され殉教した聖アンデレを、画家の大きな特徴であるバロック絵画の巨匠カラヴァッジョの強い影響を受け形成された自然主義的な徹底したリアリズムと、深い明暗対比による厳しい明暗法を用い、静寂の中に劇的に差し込む光に聖アンデレを浮かび上がらせることによって聖人の深い精神性を表現している。このような表現手法こそリベーラ様式の大きな特徴であり、最も重要な魅力なのである。
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