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ユダヤ人墓地 (Jewish Cemetery) 1655-1660年頃
141×182.9cm | 油彩・画布 | デトロイト美術館 |
17世紀オランダ絵画黄金期最大の風景画家ヤゴブ・ファン・ライスダールの最も世に知られる傑作『ユダヤ人墓地』。本作に描かれるのは、ライスダールの類稀な想像力によって生み出された≪ユダヤ人墓地≫の理想的風景で、単なる理想的風景描写に留まらず、自然の圧倒的な力強さや雄大さなど、ある種の自然への畏怖の念を思わせる思想的な表現が用いられている。また中世の建築的な廃墟や墓地、沈黙した静寂な風景の中で絶え間なく流れる流水、画面内で対称位置に配された白樺と虹の存在感などに後のロマン主義的な理念を感じさせるほか、入念に計算され描写される光と闇の劇的な表現によってもたらされる本作の陰鬱で空虚な雰囲気は、本質的な人間性における罪の意識や死への恐怖を表したものであると、一部の研究者は解釈している。なお1670年以降に描かれた同主題の作品がドレスデン国立美術館に所蔵されている。
関連:ドレスデン国立美術館所蔵 『ユダヤ人墓地』
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