2007/03/15掲載
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無原罪の御宿り(Inmaculada Concepción) 1618年頃135×102cm | 油彩・画布 | ロンドン・ナショナル・ギャラリー
幼い面持ちの聖母マリア。同時期に制作された『パトモス島の福音書記者聖ヨハネ』と対画であることが知られる本作に描かれる主題は、神の子イエスの母である聖母マリアが、マリアの母(イエスの祖母)アンナの胎内に宿った瞬間、神の恩寵により原罪から免れたとする教理≪無原罪の御宿り≫である。
【幼い面持ちの聖母マリア】
胸のあたりで両手を合わせる仕草。本作はベラスケスの師であり義父でもあるフランシスコ・パチェーコ(ベラスケスはパチェーコの娘と結婚した為)が執筆したスペイン最初の本格的な美術書である『絵画芸術論』に基づくイコノグラフィー(図像学)的展開が如実に示されている。
【胸のあたりで両手を合わせる仕草】
聖母マリアの足許の下弦の月。聖母マリアの頭上に輝く12の星々、純潔を表す若々しい乙女のような面持ち、胸のあたりで両手を合わせる仕草、偉大なる天上の力を表現した聖母マリアの背後の威光、足許の下弦の月などの図像展開は、厳しい明暗対比を用いた非常に写実性の高いベラスケス独特の描写によって実直に表現されている。
【聖母マリアの足許の下弦の月】 |