Description of a work (作品の解説)
2007/05/14掲載
Work figure (作品図)
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「信仰」の寓意

 (Allegorie op het geloof) 1673-75年頃
114.3×88.9cm | 油彩・画布 | メトロポリタン美術館

17世紀オランダの風俗画家ヨハネス・フェルメール最晩年期の作品『「信仰」の寓意』。おそらくイエズス会の有力者、もしくは熱心なカトリックの信者からの依頼によって制作されたと考えられる本作は、同宗教に対する≪信仰≫の擬人像を用いた寓意画で、画家の全作品の中でも特に、あからさまな寓意的内容が顕著に示される作品である。フェルメール1660年代屈指の代表作『絵画芸術』との構図的類似から、(おそらく依頼者からの希望で)『絵画芸術』を構図の原型としたと指摘されている本作は、チェーザレ・リーパの寓意画像集≪イコノロギア≫の「信仰は思慮深い女の座像によって表される…」に基づく図像展開が用いられたと考えられる。画面ほぼ中央では≪信仰≫の擬人像が、右手を胸に当て、天を仰ぐように視線を上方へと向けており、下半身では≪イコノロギア≫の図像に従い『地理学者』に描かれるものと同様の地球儀に足を乗せている。≪信仰≫の擬人像の隣には聖杯と聖書、十字架などカトリックのアトリビュートが置かれるテーブルが配され、天井からは宇宙の無限的広大を示すガラスの球が描かれている。また床には原罪を象徴する食べかけの林檎が落ちているほか、画面ほぼ中央最下部の蛇や石は、悪の象徴である蛇が石に潰され血を流すことから、悪に対する善の勝利を示している。画面左部分のタペストリーの図像に関しては「ルドールフの司祭」とも「東方三博士の礼拝」とも推測されている。またタペストリー部分の平面的でパターン化された粒状の光などに、表現様式・手法に関する画家の技巧的な変改・展開が示され、如実に示されるこの技巧的・表現的変化に関して、古典主義へと傾倒していった当時のオランダでの絵画的流行との関連性も注目すべき点のひとつである。17世紀フランドル絵画の巨匠ヤーコブ・ヨルダーンスの『十字架上のキリスト』を簡略化した絵画が画中画として描かれている。

関連:ウィーン美術史美術館所蔵 『絵画芸術』
関連:ヤーコブ・ヨルダーンス作 『十字架上のキリスト』


【全体図】
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手を胸に当て、天を仰ぐように視線を上方へと向ける≪信仰≫の擬人像。おそらくイエズス会の有力者、もしくは熱心なカトリックの信者からの依頼によって制作されたと考えられる本作は、同宗教に対する≪信仰≫の擬人像を用いた寓意画である。



【手を胸に当て、視線を上げる≪信仰≫】
本作の中で最も写実的描写が示される≪イコノロギア≫の図像に従い、擬人像が足を乗せる『地理学者』に描かれるものと同様の地球儀。『絵画芸術』を構図の原型としたとされている本作は、リーパの≪イコノロギア≫に基づく図像展開が用いられた。



【擬人像が足を乗せる地球儀】
平面的でパターン化された粒状の光。この如実に示される本作の技巧的・表現的変化に関して、古典主義的な絵画へと傾倒していった当時のオランダでの芸術的流行との関連性も注目すべき点のひとつである。



【平面的でパターン化された粒状の光】
ヤーコブ・ヨルダーンスの『十字架上のキリスト』を簡略化した絵画。床には原罪を象徴する食べかけの林檎が落ちているほか、画面ほぼ中央最下部の蛇や石は、悪の象徴である蛇が石に潰され血を流すことから、悪に対する善の勝利を示している。



十字架上のキリストを簡略化した絵画】

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