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聖家族(食前の祈り) 1656年
(Sainte Famille, dit Le Bénédicité)
138×89cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
フランス古典主義時代の宮廷画家シャルル・ル・ブランを代表する宗教画のひとつ『聖家族(食前の祈り)』。パリのマレ地区サン=ルイ聖堂礼拝堂の祭壇画として大工同業組合がル・ブランに依頼し制作された作品である本作に描かれる主題は、神の子イエスの降誕を知り、己の地位が脅かされることを恐れたユダヤの王ヘロデがベツレヘムに生まれた新生児の全てを殺害するために放った兵士から逃れるため、エジプトへと逃避した幼子イエスとその家族(聖母マリア、聖ヨセフ)が同国から祖国エルサレムへと帰国する前日の晩餐の場面で、しばしば主イエスが十二人の弟子と共におこなった≪最後の晩餐≫の暗示であると推測される。幼子イエスの義父であり、聖母マリアの夫でもある聖ヨセフは大工の守護聖人としても知られており、大工同業組合の依頼によって手がけられた本作では木槌や鑿(のみ)など大工道具が前景の床に配されているほか、登場人物でほぼ画面の左半分を使用し最も大きく(全身が)描かれている。また神の子イエスが卓上でとっている祈りの姿勢、特に指で示される三角形の形状は、建築芸術の象徴であると考えられているほか、父と子、そして聖霊から構成される三位一体や、世界(宇宙)の構造を示すものであるとの説も唱えられている。
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