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ラザロの蘇生 (Reacute;surrection de Lazare) 1706年
388×664cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
フランス古典主義の画家ジャン・ジュヴネ随一の大作『ラザロの蘇生』。パリのサン=マルタン=デ=シャン聖堂のために制作された複数枚の大画面作品の中のひとつである本作に描かれる主題は、ユダヤ近郊に居住していたベタニア人姉妹マルタとマリアの弟ラザロが病に倒れたとの知らせを受け、主イエスが弟子の制止を聞かずラザロの許へ向かうも、主イエスが着いたときにはラザロは死して四日経っていたが、到着した主イエスが墓石を移動し、腐敗したラザロに呼びかけると、全身を布で包まれたラザロが蘇生し墓から出てきたとされる、神の子イエスによる死者の蘇生の奇蹟の中で最も重要な逸話のひとつ≪ラザロの蘇生≫である。画面右上から左下へとほぼ対角線上に配される登場人物は各々が演劇的な姿態を示しており、本場面の奇跡的蘇生の驚愕を見事に表している。画面中央では端整に描かれた主イエスが死して全身を布で包まれたラザロに手を向け呼びかけている。それに呼応するように画面左下部分では腐敗したラザロが蘇生し起き上がる姿や、蘇生を目撃し驚く男たちや腐敗臭に顔を背ける男が描かれている。また主イエスの直ぐ隣にはラザロの姉妹マルタとマリアが弟の救いを乞う姿が描かれるほか、それらの周囲に集まる民衆がこの一連の出来事を目撃し、驚きと戸惑いの仕草を見せている。各登場人物の的確で芸術性の高い宮廷が好む独自の描写は見事の一言であり、大画面による場面展開や表現が観る者を圧倒する。
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