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十字架降下 (Descente de croix) 1697年
424×312cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
フランス古典主義の画家ジャン・ジュヴネが手がけた宗教画の中でも特に著名な代表作『十字架降下』。パリのルイ=ル=グラン広場にあるカプチン会修道院のために制作された本作に描かれる主題は、自ら王と名乗りエルサレムの民を惑わせたとして、エルサレム郊外のゴルゴタの丘で二人の盗人と共に磔刑に処され死した受難者イエスの亡骸がアリマタヤのヨセフやニコモデらによって降ろされるという、新約聖書に記される主イエスの生涯の中でも特に重要かつ最も感動に溢れる場面≪十字架降下≫で、ダイナミックな画面展開の中で如実に表される、受難者イエスの痛々しく生々しい死した肉体は、観る者の視線を否が応にも惹きつけさせる。イエスの亡骸は絶望的かつ絶対的な死を顕示するかのように、力なく四肢を垂らすように描写され、その極めて写実的で残虐的な表現は、観る者に受難者イエスが受けた(人間に対する)苦悶や苦痛を強く共感させる。本作では≪十字架降下≫を描いた古典的な作品に示される受難者、そして神の子イエスの(三位一体の一位としての)聖性の表現は影を潜め、この様に圧倒的かつ絶対的な死の存在を明確に(かつ写実的に)描写することによって、受難者イエスの悲愴的でありながら、深い精神性や敬虔性を表現しているのである。またその他の点においても、受難者イエスの亡骸を十字架から降ろす人々や骸布を広げるアリマタヤのヨセフやニコモデの渦巻くような力動的な運動性や、画面右部の暗中に薄く浮かび上がる聖母マリアの悲しみに満ちた表情など本作には見所が多い。
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