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悔悛するマグダラのマリア(聖なる炎の前のマグダラのマリア) 1642-1644年頃 (Madeleine pénitente, dite Madeleine Terff ou Madeleine à la veilleuse)
128×94cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
フランス古典主義を代表する巨匠ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの現存する作品の中で、最も多い主題のひとつ『悔悛するマグダラのマリア』。常夜灯のあるマグダラのマリア、又かつて所蔵していた人物カミーユ・テルフの名から『テルフのマグダラのマリア』とも呼ばれる本作に描かれるのは、主イエスの足下で泣き、己の涙で濡らした後、御足に接吻して香油を塗り、自らの髪でそれを拭ったとされる罪深き女で、しばしばマルタの妹でラザロの蘇生を目撃したマリア、悪霊憑きのマグダラの女と混同されている≪マグダラのマリア≫で、カウンティー美術館(L.A.)に所蔵される『悔悛するマグダラのマリア(ゆれる炎のあるマグダラのマリア)』とほぼ同一の構図、構成で手がけられているのが最も注目すべき点のひとつである。カウンティー美術館版が現存する複数の悔悛するマグダラのマリア作品の中でも最初期に描かれるとされるのに対し、様式的特徴から本作は最後期に制作されたと推測されており、特に灯される蝋燭が照らす全体的な光の表現は前者のように明確かつ対比の大きい明暗の描写から、精神的な熟成を感じさせる柔らかで深淵な光の描写へと変化を見せている。またマグダラのマリアの、己の罪を悔い改める改悛に満ちた瞳の表情や憂いを帯びた表情は、本作に観る者を強く惹きつける重要な役割を果たしている。
関連:カウンティー美術館所蔵 『悔悛するマグダラのマリア』
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