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悔悛するマグダラのマリア(ふたつの炎の前のマグダラのマリア) 制作年不明 (Madeleine pénitente, dit aussi Madeleine Wrighesman ou Madeleine aux deux flammes)
油彩・画布 | メトロポリタン美術館(ニューヨーク) |
フランス古典主義を代表する巨匠ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの現存する作品の中で、最も多い主題のひとつ『悔悛するマグダラのマリア』。ふたつの炎の前のマグダラのマリア、またはメトロポリタン美術館に寄贈した所有者の名前シャルル・ラインツマン夫妻からライツマンのマグダラのマリアとも呼ばれる本作は、現存するラ・トゥール作品の中で、最も多く発見されている主題のひとつ≪悔悛するマグダラのマリア≫を描いた作品の中の一枚で、現存する同主題の作品と比較し、明らかに場面構成要素が世俗的であることが大きな特徴のひとつである。制作年代は様式的特徴への考察に対する意見の相違のため諸説唱えられており、現在は不明とされながらも、その出来栄えは特に秀逸とされ、暗闇の中、蝋燭と鏡に映り込むのふたつの炎による明暗対比の大きい光によって、悔悛するマグダラのマリアが照らされ闇の中に浮かび上がり、ラ・トゥール独特の作品世界をつくり出している。また本作のマグダラのマリアのやや世俗的な表情や豪華な鍍金装飾が施された鏡、そして鏡の前に置かれる真珠の飾り物などは、マグダラのマリアが現世を想い、表面的な改悛にしか至っていないことを示しており、他の現存する作品の深い精神性と宗教性に富んだ場面表現とは異なっているほか、作品の構成要素においても、形状に単純化が認められており、その点でも本主題を描いた作品の中で、最も注目すべき作品のひとつに数えられる。
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