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金の支払い(まき散らされた金、高利貸し、税の支払い)
(L'Argent versé) 1616-1618年頃、又は1624年-27年頃
99×152cm | 油彩・画布 | リヴォフ美術館(ウクライナ) |
古典主義の画家ジョルジュ・ド・ラ・トゥール初期頃の重要な作品『金の支払い』。1962年に発見された、画家の作品の中でも比較的新しい部類に属される本作は、その描かれる主題に関して16世紀から17世紀のネーデルランド(フランドル)絵画作品の風俗的画題に典拠を得た≪税の支払い(又は税の徴収)≫や≪高利貸し≫とする説、新約聖書に記されるキリスト十二弟子の中のひとりで、主イエスを裏切った逸話でも名高い≪イスカリオテのユダ≫が主を裏切る代償として銀貨30枚を受け取るという宗教的主題とする説、戦時下における身代金(又は徴収金)を受け取る場面とする説など様々な説が唱えられているも、現在は≪税の支払い≫又は≪高利貸し≫とする説が有力視されている(ただし本件に関しては現在も議論が重ねられており、研究も進められている)。その為、『まき散らされた金』『高利貸し』『税の支払い』とも呼ばれる本作であるが、厚塗りされた絵具や高位置から見下ろすような視点、焦点的に描かれる(蝋燭の)光など描写的特長に初期様式の傾向が顕著であるものの、本作に描かれる夜間の場面描写は、当時の「ラ・トゥールは画業の前期に昼の情景を描き、後期に入って夜の情景を描くようになった」とされていた通説を根底から覆す大きな要因となった。
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