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いかさま師 (ダイヤのAを持った)
(Tricheur (à l'as de carreau)) 1635-1638年頃
106×146cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
古典主義の巨匠ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの最も著名な作品のひとつ『いかさま師(ダイヤのAを持った)』。本作に描かれる主題は、巨匠カラヴァッジョが最初に描いたとされる『いかさま師』であり、おそらく『いかさま師(クラブのAを持った)』の数年後に同主題、同構図で本作を描いたと推測される。しかし制作年については1635-1638年頃とする説のほか、1632-35年頃とする説など研究者によって意見や見解が異なり、現在も議論が続いている。本作と『いかさま師(クラブのAを持った)』との決定的に異なる点は題名となっている、いかさま師が手にするトランプのマークであるが、その他の部分の違いや構図的な差異も確認されている。いかさま師はトランプのマークの他に衣服に下がる飾り紐が、中央の横目の高級娼婦は首飾りや左手の角度やテーブルに置かれる金貨の数が、ワイン瓶を手にする給仕の女は衣服の色(トランプのマークとの対称性を思わせる)が、騙される若い男は衣服の丈や袖の色が異なるほか、『いかさま師(クラブのAを持った)』と比べ、高級娼婦が給仕の女に近く配置され、騙される若い男がより孤立化している印象を観る者に与えている。また中央の高級娼婦の面持ちが若干ふくよかに表現される反面、眉の描写がより鋭角的である為、不審的で騙詐的な表情が一層強調されていることも、本作の重要な点のひとつである。
関連:カラヴァッジョ作 『いかさま師』
関連:1632-1635年頃 『いかさま師(クラブのAを持った)』
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