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Introduction of an artist(アーティスト紹介)

フィリップ・ド・シャンパーニュ Philippe de Champaigne
1602-1674 | フランス | 古典主義・王立絵画・彫刻アカデミー創立メンバー

フランス古典主義時代に活躍した画家。イタリアの古典的絵画に倣う豊かで明瞭な色彩による記念碑的な画面構成とフランドル絵画の写実性や風景の綿密な描写を融合させ、独自の絵画様式を形成。フランス古典主義において確固たる地位を築くほか、1648年に設立された王立絵画・彫刻アカデミー創立に携わったメンバーのひとりでもある。1602年ブリュッセルに生まれ、同地で修行時代を過ごした後に1620年パリへ出る。同地の画家デュシェーヌなどと共に制作をおこなうほか、同氏の娘と1629年に結婚し、その翌年にフランスへ帰化。フィリップ・ド・シャンパーニュは、メディチ家出身でフランス王アンリ4世の2番目の母君マリー・ド・メディシス(イタリア語読みではマリア・デ・メディチ)やその息子ルイ13世、宰相リシュリューに庇護を受けながら精力的に制作活動をおこない、その後、宮廷の権力者や富裕層の市民などの肖像画を多数手がけるほか、教会などからの依頼によって宗教画なども制作した。1674年パリで死去。享年72歳。


Work figure (作品図)
Description of a work (作品の解説)
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最後の晩餐 (La Petite Cène) 1648年
80×149cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

フランス古典主義の画家フィリップ・ド・シャンパーニュが手がけた宗教画の傑作のひとつ『最後の晩餐』。かつてルイ16世のコレクションとして所蔵されていたものの、1777年にルーヴル美術館が購入した来歴をもつ本作に描かれる主題は、弟子らと共に食卓についた主イエスが、食事の前に自分を裏切ろうとする者を指摘し、弟子らが驚き騒ぐ中、パンとぶどう酒を「これは私の肉であり血である」と分かち与える、新約聖書の中で最も有名な場面のひとつ≪最後の晩餐≫で、ほぼ平行上に配される安定的な人物配置や堅牢な構図の中に、裏切り者がいると指摘した主イエスの発言に驚き戸惑う弟子たちの巧みな心理的描写を取り入れ、やや演劇的で記念碑的な場面表現が秀逸の出来栄えを示している。巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチが手がけた傑作『最後の晩餐』や、それに強い影響を受けているアンドレア・デル・サルトの『最後の晩餐』などに代表されるよう、15〜16世紀には平行線上に人物を配する最後の晩餐の図像表現はすでに完成していたも、その古典的図像展開にフィリップ・ド・シャンパーニュ独自の甘美性を漂わせる人物描写や感情表現、豊かで明瞭な色彩、劇性を強調させる暗部が際立つ明暗表現など(当時のフランス絵画の)流行に即した絵画的展開が示されており、17世紀フランス絵画を代表する最後の晩餐像としても評価は非常に高い。なおルーヴル美術館には1652年頃にポール・ロワイヤル・デ・シャン教会の主祭壇画として制作された、本作とほぼ同様の最後の晩餐図(158×233cm)も所蔵されるため、本作は『小さな最後の晩餐』とも呼称されている。

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屍衣の上に横たわる死せるキリスト
(Christ mort couché sur son linceul) 1654年以前
69×197cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

フランス古典主義を代表する画家フィリップ・ド・シャンパーニュの宗教画作品のひとつ『屍衣の上に横たわる死せるキリスト』。フィリップ・ド・シャンパーニュの死後、遺族によりポール=ロワイヤル・デ・シャン大修道院内の教会へ献じられたと記録に残される本作に描かれるのは、磔刑に処され死した主イエスの横たわる亡骸≪死せるキリスト≫である。このような横たわる主イエスの亡骸を描いた作品はプレデッラ(祭壇画の下部に配される横長の画面)として古くからしばしば描かれてきた。本作と同様の内容で描かれたドイツ・ルネサンスの大画家で当時の最も著名な肖像画家のひとりとしても知られるハンス・ホルバイン(子)が手がけた傑作『墓の中の死せるキリスト』と比較してみても、前者が白目を剥き、絶望的なまでに肉体的な腐敗が進行し恐々しいまでの写実性を以って描かれるのにに対し、本作の深く瞑想的な精神性を携えた高貴で崇高な主イエスの亡骸が浮かべる表情や、やや浮き彫り的に描かれた神々しく闇に浮かび上がる肉体表現は、観る者に強い神性的な霊感を与えるだけではなく、ある種の甘美的な印象すら観る者に抱かせる。これらはフィリップ・ド・シャンパーニュの類稀な画才による優れた表現力と図像的解釈が宗教画において最も良く示された典型的な様式例であり、本作はその代表作とも言える。

関連:ハンス・ホルバイン(子)作 『墓の中の死せるキリスト』

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悔悛するマグダラのマリアの奇蹟
(Miracles de sainte Marie penitente) 1656年頃
219×336cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

フランス古典主義の画家フィリップ・ド・シャンパーニュの代表作『悔悛するマグダラのマリアの奇蹟』。本作は1645年パリに起工されたフランスの代表的なバロック建築のひとつ≪ヴァル=ド=グラース聖堂≫内アンヌ・ドートリッシュの間の装飾画として制作された連作の中の1点で、文筆家ロベール・アルノー・ダンディイが1647年に仏語翻訳した≪砂漠の聖人伝≫を典拠に悔悛するマグダラのマリアの奇蹟の場面が描かれている。本作で最も注目すべき点は、バロック・ボローニャ派の巨人アンニーバレ・カラッチやを思わせる理想的風景の表現にあり、明瞭で鮮やかな色彩による情緒と物語性に富んだ後景の風景描写は、前景の森林が落す深い陰影と対照的に光に満ちており、観る者の視線を自然と傾けさせる。また前景の清流や木橋の描写や、登場人物へスポット的に当てられる光彩表現も特筆すべき点のひとつである。なお本作以外にもアンヌ・ドートリッシュの間の装飾画として制作された連作の中では『聖タイシスを救うパフヌティウス』『聖ペラギウス』『エジプトの聖マリア』などが現存している。

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1662年の奉納画 (Ex-voto de 1662 (La mère Cathrine-Agnes Arnauld et la sœur Cathrine de sainte Suzanne Champaigne)) 1662年
165×229cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

フランス古典主義の画家フィリップ・ド・シャンパーニュの代表作『1662年の奉納画』。正式な名称は『女子修道院長アトリーヌ・アニュス・アルノーと画家の娘の修道女カトリーヌ・ド・サント・スザンヌ』とする本作は、画家の娘でポール・ロワイヤル・ド・パリ修道女であったカトリーヌ・ド・サント・スザンヌが難病に陥り、医師からも絶望視される中、女子修道院長アトリーヌ・アニュス・アルノーが9日間祈祷したことで病が完治したという奇跡に娘の父フィリップ・ド・シャンパーニュが感謝し、同修道院へ献上するために描いた作品である。画面中央から右部分には足掛けのある椅子に、難病により高熱と半身不随になった修道女カトリーヌ・ド・サント・スザンヌが座り、その膝の上には(おそらく聖遺物の納められる)箱が乗せられている。また画面ほぼ中央には祈祷する女子修道院長アトリーヌ・アニュス・アルノーの姿が描かれ、画面全体は(天上からの聖なる光を思わせる)穏やかで優しさに溢れた光で満ちている。さらに画面左部分には、この奇跡的な出来事を記した銘文が配されている。当時、ポール・ロワイヤル・ド・パリ修道院は禁欲的な改革を支持していた為、国王及びイエズス会から不興を買い迫害を受けていたものの、この奇蹟は(一時的であるが)迫害を抑止する出来事ともなり、そのような歴史的背景からも、本作のもつ意味は重要視されている。

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