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悔悛するマグダラのマリアの奇蹟
(Miracles de sainte Marie penitente)
1656年頃
219×336cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
フランス古典主義の画家フィリップ・ド・シャンパーニュの代表作『悔悛するマグダラのマリアの奇蹟』。本作は1645年パリに起工されたフランスの代表的なバロック建築のひとつ≪ヴァル=ド=グラース聖堂≫内アンヌ・ドートリッシュの間の装飾画として制作された連作の中の1点で、文筆家ロベール・アルノー・ダンディイが1647年に仏語翻訳した≪砂漠の聖人伝≫を典拠に悔悛するマグダラのマリアの奇蹟の場面が描かれている。本作で最も注目すべき点は、バロック・ボローニャ派の巨人アンニーバレ・カラッチやを思わせる理想的風景の表現にあり、明瞭で鮮やかな色彩による情緒と物語性に富んだ後景の風景描写は、前景の森林が落す深い陰影と対照的に光に満ちており、観る者の視線を自然と傾けさせる。また前景の清流や木橋の描写や、登場人物へスポット的に当てられる光彩表現も特筆すべき点のひとつである。なお本作以外にもアンヌ・ドートリッシュの間の装飾画として制作された連作の中では『聖タイシスを救うパフヌティウス』『聖ペラギウス』『エジプトの聖マリア』などが現存している。
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