■ |
最後の晩餐 (La Petite Cène) 1648年
80×149cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
フランス古典主義の画家フィリップ・ド・シャンパーニュが手がけた宗教画の傑作のひとつ『最後の晩餐』。かつてルイ16世のコレクションとして所蔵されていたものの、1777年にルーヴル美術館が購入した来歴をもつ本作に描かれる主題は、弟子らと共に食卓についた主イエスが、食事の前に自分を裏切ろうとする者を指摘し、弟子らが驚き騒ぐ中、パンとぶどう酒を「これは私の肉であり血である」と分かち与える、新約聖書の中で最も有名な場面のひとつ≪最後の晩餐≫で、ほぼ平行上に配される安定的な人物配置や堅牢な構図の中に、裏切り者がいると指摘した主イエスの発言に驚き戸惑う弟子たちの巧みな心理的描写を取り入れ、やや演劇的で記念碑的な場面表現が秀逸の出来栄えを示している。巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチが手がけた傑作『最後の晩餐』や、それに強い影響を受けているアンドレア・デル・サルトの『最後の晩餐』などに代表されるよう、15〜16世紀には平行線上に人物を配する最後の晩餐の図像表現はすでに完成していたも、その古典的図像展開にフィリップ・ド・シャンパーニュ独自の甘美性を漂わせる人物描写や感情表現、豊かで明瞭な色彩、劇性を強調させる暗部が際立つ明暗表現など(当時のフランス絵画の)流行に即した絵画的展開が示されており、17世紀フランス絵画を代表する最後の晩餐像としても評価は非常に高い。なおルーヴル美術館には1652年頃にポール・ロワイヤル・デ・シャン教会の主祭壇画として制作された、本作とほぼ同様の最後の晩餐図(158×233cm)も所蔵されるため、本作は『小さな最後の晩餐』とも呼称されている。
|