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羊飼いの礼拝 (Adoration des bergers) 1644-47年頃
107×137cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
フランス古典主義の画家ジョルジュ・ド・ラ・トゥール1640年代の代表的作品のひとつ『羊飼いの礼拝』。本作に描かれる主題は新約聖書ルカ福音書 第2章15-20に記される、神の子イエスを宿す聖なる器として父なる神より選定され、大天使ガブリエルから聖胎したことを告げられた聖母マリアがベツレヘムの厩で神の子イエスを産んだ後、未来のユダヤの王である神の子イエスの降誕を大天使によって告げられた羊飼いたちがベツレヘムの厩へ赴き、その未来の王たる神の子イエスの降誕を礼拝する場面≪羊飼いの礼拝≫で、様式的特徴から多くの研究者は晩年期の作品としている。当初はヘリット・ファン・ホントホルストの作とされていたものの、1926年にジョルジュ・ド・ラ・トゥール研究の第一人者であるヘリット・フォッスによってラ・トゥールの作と認定されたほか、ルーヴル美術館に入った画家の最初の作品としても知られる本作では画面中央やや下部分に降誕した神の子イエスが、左右に聖母マリアとマリアの夫で神の子イエスの義父である聖ヨセフが、中心に羊飼いら3人が配されている。本作は『ラ・ノッテ(夜)』とも呼ばれる16世紀エミリア派の大画家コレッジョの『羊飼いの礼拝』に代表されるよう、神の子イエスの降誕を夜の情景の中に描いた作品であるが、最も特徴的なのは多くのラ・トゥール作品に共通する蝋燭の炎によるスポット的な光の描写にある。厩の中で安らかに眠る神の子イエスに集中して当てられる蝋燭の炎は煌々と眩い光を放ちながらイエスを柔らかく包み込むように降誕したばかりの幼子を照らしている。画面右では老聖ヨセフが左手で蝋燭の光を遮り、画面左では聖母マリアが祈りを捧げるような仕草を見せている。神の子イエスに当てられる鮮明な光とは異なる、聖母マリアや聖ヨセフ、羊飼いたち登場人物のほか、闇夜全体を包み込むような薄明かりの表現もまた、本作の大きな見所のひとつである。
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