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盲人を治すキリスト(エリコの盲人) (Christ guérissant les aveugles, dit aussi Aveugles de Jéricho)
1650年 | 119×176cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
古典主義の画家ニコラ・プッサンの代表作『盲人を治すキリスト(エリコの盲人)』。画家後期の作品である本作に描かれるのは新約聖書マタイ福音書 20:29-34に記される≪盲人の治癒(盲人を治すキリスト、エリコの盲人とも呼ばれる)≫の場面で、古典主義的な様式の中に示される各登場人物の的確な描写や練度の高い安定的な風景表現が大きな魅力である。本作の主題≪盲人の治癒≫はマタイ福音書の他、マルコ福音書、ルカ福音書などへ複数の逸話として記されているが、本作は中でも一般的に知られている、主イエスの一行が群衆を連れエリコの街を出発する時に道端で座っていた二人の盲人がイエスに向かい「主よ、我らを憐れんでください。目を開けて欲しいのです」と叫ぶと、それを黙らせようとした他の群衆を静止し、主イエスが二人の盲人の瞼に触れ、彼らの目を見えるようにしたされる話が描かれている。画面中央で主イエスが盲人の目に手を当て目を癒しており、その背後ではもう一人の盲人が群衆のひとりに片手で押さえられながらも助けを求めている。古典的で安定的ながら的確な主イエスや盲人らを始めとした各人物の仕草や場面描写は秀逸な出来栄えを示しているほか、背後に描かれる古代的情景を感じさせる構築的な風景表現も特筆に値する。
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