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川から救われるモーセ (Moïse sauvé des eaux) 1638年
93×121cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
フランス古典主義の巨匠ニコラ・プッサンの代表的な作例のひとつ『川から救われるモーセ』。造園家ル・ノートルのコレクションに所蔵されていたことが知られており、制作年が1638年と明確である為、画家のこの頃の作品の基準作としてしばしば用いられている本作に描かれるのは、旧約聖書 出エジプト記 1-2章に記される、イスラエル人の人口が増加の一途を辿り、次第に脅威を感じるようになったファラオがイスラエル人の男児の赤子を殺すよう命令するも、モーセの母ヨケベドは、三ヶ月間隠し育てた我が子の身の危険を察して、産まれて間も無いモーセを葦舟に乗せてナイル川に流すと、ナイル川下流の水辺で水遊びをしていたファラオの王女が幼児モーセを発見し、モーセを王子として育てることを決意する場面≪川から救われるモーセ(モーセの発見)≫で、抑制的で静謐な場面表現による、安定的で知的な構図・構成は、プッサン独自の様式の典型をみせている。特に、幼子モーセを指差すファラオの王女の古代彫像を思わせるかのような均整と品位に溢れた記念像的な表現や、やや冷寒で鮮明な色彩、水平線上に配される登場人物、構成要素の特徴は本作の雰囲気や世界観をも決定付ける主要因であり、本作の注目すべき点のひとつでもある。なお画家は本作以外に少なくとも2点以上、同主題を手がけていることが判明しており、本作は、中でも古い年代に制作された作品と位置付けられている。
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