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エジプトへの逃避途上の休息
(Repos pendant la fuite en Egypte) 1657年
154×214cm | 油彩・画布 | エルミタージュ美術館 |
フランス古典主義の画家ニコラ・プッサン1650年代の代表作『エジプトへの逃避途上の休息』。本作に描かれるのは、新約聖書に記される、神の子イエスの降誕を知り、己の地位が脅かされることを恐れたユダヤの王ヘロデがベツレヘムに生まれた新生児の全てを殺害するために放った兵士から逃れるため、エジプトへと逃避した聖母マリアと幼子イエス、マリアの夫の聖ヨセフの姿≪エジプトへの逃避途上の休息≫で、約50点ほど確認されている新約聖書からの主題作品の中でも、代表的な作例のひとつとして知られている。背景の描写は当時(1630年頃)、ローマ近郊のパレストリーナ寺院で発見された古代エジプトの風俗が描かれたモザイク画の構図・構成をそのまま使用している。これは本作を描く際、ニコラ・プッサンがこのモザイク画から時代考証をおこなっていたことを示すものであり、画家の飽くなき探究心と規範的絵画制作の表れでもある。また本作の表現においても、聖母子を中心とし、聖ヨセフや聖母らに水や食物を捧げる現地の人々をその周囲に配するなど非常に安定的で秩序的な構図を用いているほか、明瞭で鮮やかな色彩や静謐で穏やかな場面構成など、本作には画家の特色がよく示されている。
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