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黄金の子牛の礼拝 (L'adoration du veau D'or) 1633-37年
154×214cm | 油彩・画布 | ロンドン・ナショナル・ギャラリー |
フランス古典主義の画家ニコラ・プッサンの代表作『黄金の子牛の礼拝』。フランチェスコ・バルベリーニ枢機卿(1597-1679)の秘書で、自由思想家や古代ローマ史研究家として知られるカッシアーノ・ダル・ポッツォ(1588〜1656)の従兄アマデオ・ダル・ポッツォのために、現在ヴィクトリア国立美術館が所蔵する『紅海を渡るモーセ(紅海の渡海)』と共に対画として制作された本作に描かれるのは、旧約聖書出エジプト記32章に記される、モーセがシナイ山で神より十戒を授かっていた頃、シナイ山の麓の一行はモーセの帰りが遅いことで不安を募らせ、遂には兄弟のアロンに金の耳輪を溶かして、その金から黄金の子牛を造り、新たな神として崇め始めるものの、モーセが十戒を手にシナイ山の麓に戻り、一行が黄金の子牛を崇め堕落した姿を目撃すると怒りに震え、持ち帰った十戒を叩きつけて砕く場面≪黄金の子牛の礼拝≫で、成熟しつつある画家の卓越した表現が見事に示されている。イスラエルの人々が父なる神を捨て、偶像(黄金の子牛)を中心に一心に信仰している。一方で、画面左上部ではシナイ山から戻ってきたモーセが、人々のおこないを目撃し、怒りにまかせ、父なる神から授かった十戒の記される石板を地面に叩きつけようとしている。本作の空間構成において大々的に奉られた黄金の子牛とその台座は重要な基礎と規定を担っているほか、プッサンの作品に共通する安定的な人物の配置や構図は、本作にも顕著に示されている。
関連:対画 『紅海を渡るモーセ(紅海の渡海)』
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