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homeページCollection常設展示ゴシック美術ランブール兄弟 (Limbourg, les freres de)
Work figure (作品図)
Description of a work (作品の解説) 2006/12/25掲載
【全体図】
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ベリー公のいとも豪華なる時祷書(暦頁部分)
(Très Riches Heures) 1413年頃-1416年
29×21cm | 羊皮紙 | シャンティイ・コンデ美術館

世界で最も美しい本と称されるランブール兄弟による時祷書『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』。芸術の庇護者であった裕福な権力者ベリー公ジャンの注文により制作された≪時祷書(キリスト教徒が時課の祈りを捧げるために用いた祈祷文、賛歌、月暦図などを伴う祈祷書)≫で、『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』と呼ばれる本作は、季節の労働や貴族の諸生活を写本挿絵(ミニアチュール)として描いた≪暦頁(第2-14葉)≫、主に新約聖書の各場面を描いた≪聖母の小聖務日課(第25-63葉)≫、≪悔悛詩篇・連祷(第64-75葉)≫、≪死者の聖務日課(第82-108葉)≫、≪ローマ地図(第141葉裏)≫、≪受難の聖務日課(第142-153葉)≫から構成される。本項で取り上げる暦頁は高価な顔料を多用し丹念に描写された各場面の類稀な表現や変化に富んだ図像展開は本書の中でも特に優れた部分として名高い。また当時としては極めて稀な黄道十二宮による占星術的人体図が描かれたことは注目すべき点のひとつである。各暦法の解説については下部に別途記した。なお本書はペストによってベリー公とランブール兄弟が死去したために未完に終わるも、15世紀中葉にルネ王周辺の画家(複数人説も唱えられる)が手を加えた後、1485-89年頃に画家ジャン・コロンブが完成させたとされるが、関与した範囲は今なお調査中である。

関連:拡大図 1月/2月/3月/4月/5月/6月/7月/8月/9月/10月
関連:拡大図 11月/12月/占星学的人体(黄道十二宮人間)


【1月部分『新年の祝宴につくベリー公』】
第2葉1月部分に描かれる『新年の祝宴につくベリー公』。ベリー公をはじめ、高位の聖職者や貴族ら賓客の他、従者、兵士など様々な人々が描かれる本挿絵(ミニアチュール)の祝宴の舞台となったのはオテル・ド・ジア宮廷大広間と推測されている。
関連:1月部分拡大図

【2月部分『雪の積もる田舎の風景』】
第3葉2月部分に描かれる『雪の積もる田舎の風景』。農家の中で暖をとる男女らや羊小屋、屋外で働く人々など当時の寒々しい冬の生活がありありと描写されている。また奥行きを感じさせる急激な構図は本頁の注目すべき点である。
関連:2月部分拡大図

【3月部分『牛に鋤を牽かせる農夫』】
第4葉3月部分に描かれる『牛に鋤を牽かせる農夫』。ベリー公の居城を背景に、畑を畜牛に鋤を牽かせ耕す農夫や、種まき、葡萄の木々の手入れなど農民の労働を豊穣の象徴として描いている。また本頁は後世の画家の手が入ると推測される
関連:3月部分拡大図

【4月部分『王子の婚姻』】
第5葉4月部分に描かれる『王子の婚姻』。司祭が執り行う婚姻の儀で二人の王族が立会人に見守られながら指輪を交換し、傍らで侍女たちが草花を摘んでいる。高価なラピスラズリを多用した鮮やかな群青色が、本場面によく映えている。
関連:4月部分拡大図

【5月部分『若葉狩り』】
第6葉5月部分に描かれる『若葉狩り』。5月1日におこなわれる伝統行事『若葉狩り』に向かう貴族らの騎馬行進を描いた本頁の解釈は、ベリー公が娘をその婚約者の下へ連れている場面であるとする説も唱えられている。
関連:5月部分拡大図

【6月部分『夏草の刈り入れ』】
第7葉6月部分に描かれる『夏草の刈り入れ』。豊富な栄養を含む為、家畜の飼料に用いられる夏草を刈り入れる人々を描いた本作を完成させたのは、15世紀中葉の画家とする説とジャン・コロンブとする説が唱えられ、現在も議論が続いている。
関連:6月部分拡大図

【7月部分『小麦の刈り入れ、羊毛刈り』】
第8葉7月部分に描かれる『小麦の刈り入れ、羊の毛の刈り込み』。当時の農民にとって7月の重要な仕事である小麦の刈り入れと、羊の毛の刈り込みの作業が、典型的な田園風景の中で情緒豊かに描かれている。
関連:7月部分拡大図

【8月部分『鷹狩りに赴く貴族たち』】
第9葉8月部分に描かれる『鷹狩りに赴く貴族たち』。前景では従者に導かれ裕福な諸侯らに人気の高い娯楽である鷹狩りに出かける貴族らが、中景では川遊びをおこなう人々、藁束をつくる農民が、遠景にはシャトゥー・デタンプ城が描かれている。
関連:8月部分拡大図

【9月部分『葡萄の収穫』】
第10葉9月部分に描かれる『葡萄の収穫』。勇壮なソーミュール城の前の丘陵の畑に実った葡萄を収穫は秋の代表的な農民の仕事である。またこの前景部分を完成させたのはジャン・コロンブであると推測されている。
関連:9月部分拡大図

【10月部分『種播き』】
第11葉10月部分に描かれる『種播き』。本頁は古くから秋の情景として馴染みあった種播きの場面で、前景では種播きをする男、馬に重石を乗せた耕器を引かせる男が、後景には当時新築されたばかりのルーヴル宮が描かれている。
関連:10月部分拡大図

【11月部分『豚に団栗を食べさせる男』】
第12葉11月部分に描かれる『豚に団栗の実を食べさせる男』。冬に備え家畜である豚に団栗(ドングリ)の実を食べさせる本場面は農民にとってこの季節の重要な仕事のひとつであった。また本頁は全面的にジャン・コロンブの手が入っている。
関連:11月部分拡大図

【12月部分『猪狩り』】
第13葉12月部分に描かれる『猪狩り』。複数頭の猟犬によって猪狩りがおこなわれる本場面は、冬としては珍しい主題で、傍らでは男が角笛を吹き狩猟の収穫を告げている。本頁はジャン・コロンブ以外の画家によって完成させられたと考えられている。
関連:12月部分拡大図

占星学的人体(黄道十二宮人間)
第14葉『占星学的人体(黄道十二宮人間)』。当時としては時祷書に描かれることが極めて稀であった黄道十二宮による占星術的人体図は解剖学的な側面も見出せる。また非常に優雅で繊細な各部分の描写は本時祷書の中でも別格の存在感を示す。
関連:占星学的人体(黄道十二宮人間)拡大図

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