Description of a work (作品の解説)
2007/11/12掲載
Work figure (作品図)
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『ル・フィガロ』を読む(画家の母の肖像)

 1878年
(Reading Le Figaro (Portrait of the Artist's Mother))
81.3×66cm | 油彩・画布 | 個人所蔵

印象主義時代に活躍したアメリカ出身の女流画家メアリー・カサットの代表作『ル・フィガロ』を読む(画家の母の肖像)』。本作はフランス国内では最も古い歴史を持つ日刊新聞≪ル・フィガロ≫を読む画家の母親キャスリン・カサットの姿を描いた肖像画である。1877年に両親と妹リディアが画家の滞在していたパリへと移住した翌年に描かれた作品で、フランス語に精通し(画家やリディアに仏語を教えている)、社会情報にも詳しかった教養高い母親キャスリン・カサットは、画家にとって最も身近であり、かつ最も信頼のおけるモデルであった。本作にもその一面が良く表れており、ル・フィガロを読むキャスリン・カサットは知的で清廉な様子であるも、ただそのイメージに固執することなく、左手薬指に填められる指輪や、清潔感と伝統性を感じさせる柔らかな白い衣服の表現に母親としての心象を結び付けている。また両親と妹が移住してきた1877年には、画家に多大な影響を与えた印象派の巨匠エドガー・ドガと知り合っており、本作でも確かな画家のデッサン力を感じさせる形体の描写や、鏡による要素的強調(鏡にキャスリンの顔ではなく新聞を映すことによって母親の教養的イメージを強調している)、それに伴う空間的構成にそれが感じられる。本作は制作された翌年(1879年)にアメリカの美術協会が開催した展示会に出品され、「出品された全作品の中で技術的に最も優れた作品のひとつだ。日常が如何に素晴らしく映るのか、それをこの作品で体験することができる。」と絶賛された。なお本作の鏡の使用に関しては、一部の研究者から(ドガの線描主義に決定的な影響を与えた)新古典主義の巨匠アングル、又はそれに準ずる肖像画作品に対しての(皮肉的な)賞賛とする解釈も唱えられている。


【全体図】
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ル・フィガロ紙に目を通す画家の母親キャスリン・カサット。本作は新聞≪ル・フィガロ≫を読む画家の母親キャスリン・カサットの姿を描いた肖像画で、フランス語に精通し、社会情報にも詳しかった教養高い母親キャスリン・カサットは、画家にとって最も身近であり、かつ最も信頼のおけるモデルであった。



【画家の母親キャスリン・カサット】
キャスリン・カサットの右隣に配される鏡に映るル・フィガロ。本作の確かな画家のデッサン力を感じさせる形体の描写や、鏡による要素的強調(鏡にキャスリンの顔ではなく新聞を映すことによって母親の教養的イメージを強調している)、それに伴う空間的構成にエドガー・ドガの影響が感じられる。



【鏡に映るル・フィガロ】
画面右下に記される画家の署名。ル・フィガロを読むキャスリン・カサットは知的で清廉な様子であるも、ただそのイメージに固執することなく、左手薬指に填められる指輪や、清潔感と伝統性を感じさせる柔らかな白い衣服の表現に母親としての心象を結び付けている。



【画面右下に記される画家の署名】

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