Description of a work (作品の解説)
2009/07/15掲載
Work figure (作品図)
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アルルのゴッホの椅子


(La chaise et la pipe) 1888年
93×73.5cm | 油彩・画布 | ロンドン・ナショナル・ギャラリー

後期印象派における孤高の画家フィンセント・ファン・ゴッホ、アルル滞在期の代表作『アルルのゴッホの椅子(黄色い椅子、パイプが載っている椅子)』。陽光の強烈な光と色彩と、画家仲間たちによる共同制作を熱望し、1888年の2月から南仏アルルへ滞在したゴッホが同地で制作した作品である本作に描かれるのは、画家自身が黄色い家(アルル滞在時の共同生活場所兼アトリエ)で使用していた≪椅子≫で、『アルルのゴッホの寝室』などゴッホが手がけた他の作品にも登場している。本作は、ゴッホの誘いを受け、画家仲間の中で唯一南仏アルルへと向かった大画家(そして画家としての偉大なる先輩)ゴーギャンが、黄色い家で使用していた椅子を画題とした作品『ゴーギャンの椅子(本と蝋燭が載っている椅子)』と対の作品であり、おそらくはゴーギャンとの関係に決定的な亀裂が入る直前頃に制作されたと考えられている。画面中央へは、やや高い視点から描かれる斜めに配された黄色の木椅子が描かれており、その上にはゴッホが当時愛用していたパイプ煙草が載せられている。ゴッホは弟テオへ送った手紙の中で「芸術家が座った椅子のみを描くことは、その芸術家の喪失なのだ」という主旨を述べており、本作には芸術家同士の共同生活による制作での相乗的効果を願っていたゴッホの、ゴーギャンとの緊張関係への喪失感や失望を見出すことができる。また画家の共同生活への並々ならぬ熱意は、そのままゴッホの社会主義的な思想が反映している点も特筆に値する。表現手法としては主題である簡素な黄色の椅子と対比させるかのような床の赤褐色や壁や扉の青緑色、そして椅子と呼応させている木箱に入った玉葱など明快な色彩的表現は、椅子の存在感を際立たせることに成功している。

関連:対画 『ゴーギャンの椅子(本と蝋燭が載っている椅子)』


【全体図】
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椅子の上に置かれたパイプ煙草。南仏アルルへ滞在したゴッホが同地で制作した作品である本作に描かれるのは、画家自身が黄色い家(アルル滞在時の共同生活場所兼アトリエ)で使用していた≪椅子≫で、『アルルのゴッホの寝室』などゴッホが手がけた他の作品にも登場している。



【椅子の上に置かれたパイプ煙草】
単純で簡素な形体の黄色い椅子。ゴッホは弟テオへ送った手紙の中で「芸術家が座った椅子のみを描くことは、その芸術家の喪失なのだ」という主旨を述べており、本作にはゴッホの、ゴーギャンとの緊張関係への喪失感や失望を見出すことができる。



【単純で簡素な形体の黄色い椅子】
椅子と色彩的対比を示す青緑色の扉。表現手法としては主題である簡素な黄色の椅子と対比させるかのような床の赤褐色や壁や扉の青緑色、そして椅子と呼応させている木箱に入った玉葱など明快な色彩的表現は、椅子の存在感を際立たせることに成功している。



【椅子と色彩的対比を示す青緑色の扉】

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