Description of a work (作品の解説)
2008/10/19掲載
Work figure (作品図)
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草原(ブゾンの原)

 (La Prairie) 1874年
57×80cm | 油彩・画布 | ベルリン国立美術館

印象派最大の巨匠のひとりクロード・モネの美しい良作『草原(ブゾンの原)』。1875年にバティニョール派(後の印象派)の画家たちと結びつきの強かった画商デュラン=リュエルの画廊で開催された第2回印象派展や、1889年に彫刻家オーギュスト・ロダンと共同で開催したモネ・ロダン展への出品作である本作は、当時、画家が住んでいたパリ近郊セーヌ川右岸にあるイル=ド=フランス地方の街アルジャントゥイユの西方に位置するブゾン(ベゾン)の草原で静かに読書する画家の最初の妻カミーユと息子ジャンを描いた作品である。近景として画面下部やや左に開いた日傘を逆さに置き、広く影が落ちる草原に座り込んで読書するカミーユが配されおり、その少し奥となる影の切れ目の向こう側には息子ジャンが画面のほぼ中央に、2本の幹の細い白木が息子ジャンの左側に配されている。そして中景には強い風によって大きく靡く数本の背の高い木々と、それよりやや背の低い木々が点々と、遠景には青味を帯びた小高い山々が描き込まれている。柔らかい陽光の射し込むブゾンの草原は輝きを帯びているかのように明瞭で、水平が強調される安定的で単純な画面構成ながら豊かな詩情的雰囲気を醸し出している。また速筆的な筆触による効果も手伝って、本作に用いられる色彩そのものも実に幸福的かつ抒情的であり、金銭的余裕は皆無に等しかったものの画家の芸術的充実とその探求がよく示されている。さらに靡く中景の木々を始めとした風という自然現象が静寂感の漂う画面の中に動的な運動性と時の連続性を与えている。本作のような草原(森林)内で読書する(余暇を楽しむ)婦人の姿は印象派の画家仲間の間ではすでに一般化しつつあったが、例えば、ほぼ同時期に本作と同様の画題を描いたベトル・モリゾの作品『読書(パラソル)』と本作を比較してみると、前者がその瞬間の雰囲気と感情性を捉えることを重要視しているのに対し、本作では色彩による情景全体の心象的描写により強い関心が寄せられているなど、画家によってその取り組みには大きな差異があることも注視すべき点である。


【全体図】
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日傘を草原に置き読書する妻カミーユ。第2回印象派展やモネ・ロダン展への出品作である本作は、当時、画家が住んでいたパリ近郊アルジャントゥイユの西方に位置するブゾンの草原で読書する画家の最初の妻カミーユと息子ジャンを描いた作品である。



【日傘を草原に置き読書する妻カミーユ】
草原の中に立つ息子ジャンの姿。速筆的な筆触で描写される柔らかい陽光の射し込むブゾンの草原は輝きを帯びているかのように明瞭で、水平が強調される安定的で単純な画面構成ながら豊かな詩情的雰囲気を醸し出している。



【草原の中に立つ息子ジャンの姿】
強い風によって大きく靡く木々。本作に用いられる色彩そのものも実に幸福的かつ抒情的であり、画家の芸術的充実とその探求がよく示されているほか、靡く中景の木々を始めとした風という自然現象が静寂感の漂う画面の中に動的な運動性と時の連続性を与えている。



【強い風によって大きく靡く木々】

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