Description of a work (作品の解説)
2008/05/08掲載
Work figure (作品図)
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かわいいマルセル

 (La patite Marcelle) 1895年
64×46cm | 油彩・画布 | マルモッタン美術館(パリ)

印象主義時代に活躍した女流画家ベルト・モリゾの絶筆『かわいいマルセル』。本作に描かれるのは1892年に最愛の夫ウジェーヌ・マネが他界した後、モリゾらが引っ越した、ヴィルジュストとブーローニュの森の中間にある街ヴェベールのアパルトマンの管理人の娘≪マルセル≫で、本作は画家が風邪を患い、体調を悪化させたことによって筆を置くことになった最後の作品として知られている。画面中央に配される、やや斜めに構えたあどけないマルセルは、口を半開きにして、観る者へ無垢な視線を向ける。その表情は子供が見せる、全く己を飾らない自然体の姿そのものであり、女性や子供たちの瞬間的な日常性を表現することに生涯を懸けて取り組んだモリゾの特徴が良く示されている。特にまどろむかのように描かれるマルセルの瞳の独特の表情や、力みを感じさせないゆったりとしたマルセルの姿態は本作の中でも特に注目すべき点である。さらに画家の晩年期の筆触的特徴である流れるように長く伸びた太線状の筆捌きによって、静的な場面を描いているにもかかわらず、躍動的な生命感を観る者に強く印象付ける。色彩表現においても同様であり、まるで燃えるような赤色によって描写される背景と、あくまでも柔和的で子供らしさを示すマルセルの頭髪の色彩や淡色て処理される衣服の色彩は、画面の中で調和し、豊かな統一感を醸し出している。本作の画面下部、特にマルセルの両手部分や左端部分は、モリゾが10年前(1885年)に手がけた『自画像』と同様、殆ど形態を描写することなく、抽象的に表現されているが、その未処理的な処理が本作をより味わい深いものにしている。


【全体図】
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あどけない表情を浮かべるマルセル。本作に描かれるのは1892年に最愛の夫ウジェーヌ・マネが他界した後、モリゾらが引っ越した街ヴェベールのアパルトマンの管理人の娘≪マルセル≫で、本作は画家が風邪を患い、体調を悪化させたことによって筆を置くことになった最後の作品として知られている。



【あどけない表情を浮かべるマルセル】
淡色て処理される衣服の色彩。マルセルの表情は子供が見せる、全く己を飾らない自然体の姿そのものであり、女性や子供たちの瞬間的な日常性を表現することに生涯を懸けて取り組んだモリゾの特徴が良く示されている。



【淡色て処理される衣服の色彩】
流れるように長く伸びた太線状の筆捌き。画家の晩年期の筆触的特徴である流れるように長く伸びた太線状の筆捌きによって、静的な場面を描いているにもかかわらず、躍動的な生命感を観る者に強く印象付ける。



【流れるように長く伸びた筆捌き】

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