Description of a work (作品の解説)
2008/08/22掲載
Work figure (作品図)
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アリーヌ・シャリゴの肖像(ルノワール夫人の肖像)


(Portrait de Aline Charigot (Madame Ronoir)) 1885年頃
65.4×54cm | 油彩・画布 | フィラデルフィア美術館

印象主義時代を代表する画家ピエール=オーギュスト・ルノワールの愛情に溢れた作品『アリーヌ・シャリゴの肖像(ルノワール夫人の肖像)』。おそらくは当時はまだ恋人であったアリーヌ・シャリゴとルノワールの間に息子ピエールが誕生した1885年の夏頃に描かれた本作は、画家が生涯で複数枚手がけているアリーヌ・シャリゴの肖像画の最初の作品として知られている。ルノワールとアリーヌ・シャリゴは1890年に正式に結婚するが、1880年代初頭のルノワールは労働者地区であるモンマルトルで針子として働く田舎娘のアリーヌ・シャリゴと、美貌と都会的な洗練さを兼ね備えたシュザンヌ・ヴァラドンとの間で大きく心が揺れていたという事実は、画家随一の代表作『田舎のダンス』、『都会のダンス』でもよく示されている。本作にはそんな状況にあった画家が複雑な葛藤の末に辿り着いたアリーヌ・シャリゴへの深い真実の愛を強く感じさせ、実際、ルノワールは本作を生涯手放さなかった。画面中央に描かれる麦藁帽子を被り頬をやや紅潮させたアリーヌ・シャリゴは生気に溢れており、その瞳はアリーヌ・シャリゴ、そしてルノワール自身の幸福が反映しているかのように輝きに満ちている。また素朴な衣服に身を包んだアリーヌ・シャリゴのふくよかな姿態も、その後のルノワールの裸婦像を予感させる美しさと柔らかさを顕著に感じさせる。また表現様式に注目しても、印象主義的表現に疑問を抱き、新たな表現を模索していた、所謂、(乾いた、酸っぱいとも呼ばれる)枯渇時代に共通するやや硬質的な表現や寒色を用いた明快な描写はこの頃のルノワールの作品の大きな特徴であるが、同時に本作からは後年に画家が辿り着く幻想性と叙情性に満ちた色彩表現の萌芽も僅かながら感じることができる。なおルノワールは本作を手がけた翌年(1886年)に息子ピエールを抱き授乳するアリーヌ・シャリゴの姿『授乳する母親(母性)』を描いている。

関連:1886年制作 『授乳する母親(母性)』


【全体図】
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生気に満ちたアリーヌ・シャリゴの表情。画面中央に描かれる麦藁帽子を被り頬をやや紅潮させたアリーヌ・シャリゴは生気に溢れており、その瞳はアリーヌ・シャリゴ、そしてルノワール自身の幸福が反映しているかのように輝きに満ちている。



【生気に満ちたアリーヌ・シャリゴの表情】
素朴な衣服に身を包んだアリーヌ・シャリゴのふくよかな姿態。おそらくは当時はまだ恋人であったアリーヌ・シャリゴとルノワールの間に息子ピエールが誕生した1885年の夏頃に描かれた本作は、画家が生涯で複数枚手がけているアリーヌ・シャリゴの肖像画の最初の作品として知られている。



【アリーヌ・シャリゴが着る素朴な衣服】
やや硬質的な表現や寒色を用いた明快な描写。この独特な表現は1880年代中期のルノワールの作品の大きな特徴であるものの、同時に本作からは後年に画家が辿り着く幻想性と叙情性に満ちた色彩表現の萌芽も僅かながら感じることができる。



【寒色を用いた明快な描写】

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