Description of a work (作品の解説)
2008/12/12掲載
Work figure (作品図)
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草原で花を摘む少女たち


(Dans la prairie) 1890年頃
65×81cm | 油彩・画布 | ボストン美術館

印象派の大画家ピエール=オーギュスト・ルノワールが晩年に獲得した独自の様式に至る直前の傑作『草原で花を摘む少女たち』。本作は場所は特定できないものの、美しい草原に生えた背の低い樹木に咲く花を摘み遊ぶ少女たちを描いた作品である。画面中央やや下に描かれる2人の愛らしい少女の内、可愛らしい白い水玉模様のある橙色が差した衣服と、細かい襞のついた帽子を身に着ける少女は、右手を伸ばし小枝に咲く花を摘んでおり、もう一方の茶色の玉模様の入った白い衣服と青い腰帯を身に着け、花飾りのついた黄色い帽子を被る少女は花飾りを編んでいる様子である。本作で最も注目すべきは柔らかく流れるような暖かみを感じさせる描写手法にある。≪枯渇時代≫と呼ばれる1880年代のルノワールは『女性大浴女図(浴女たち)』に代表されるよう、古典的な写実性を重要視し、硬質的で冷感的な描写を用いていたが、本作では心情に残る印象をそのまま描いたかのような柔和で穏やかな描写が明確に示されている。この描写手法こそ晩年期にかけて画家が奔放に発達させてゆく独自の表現様式の根幹であり、そのような転換点における作品という意味からも本作は重要視されている。また少女らの姿態によって構成される安定的な三角形や、穏やかな風を感じさせる草原の緑色と見事な色彩的調和を示す少女らの衣服の色彩など、注目すべき点は多い。なおニューヨークのメトロポリタン美術館には同時期に制作された同主題(そして登場人物も同じ)の作品『草原にて』が所蔵されている。

関連:1890年頃制作 『草原にて』


【全体図】
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花飾りがついた帽子を被る少女。本作は場所は特定できないものの、美しい草原に生えた背の低い樹木に咲く花を摘み遊ぶ少女たちを描いた作品で、黄色い帽子を被る少女は花飾りを編んでいる様子である。



【花飾りがついた帽子を被る少女】
摘まれた花で編まれる飾り。1880年代のルノワールは古典的な写実性を重要視し、硬質的で冷感的な描写を用いていたが、本作では心情に残る印象をそのまま描いたかのような柔和で穏やかな描写が明確に示されている。



【摘まれた花で編まれる飾り】
樹木に咲く花へ手を伸ばす少女。1890年頃に制作されたと推測される本作で、可愛らしい白い水玉模様のある橙色が差した衣服と、細かい襞のついた帽子を身に着ける少女は、右手を伸ばし小枝に咲く花を摘んでいる。



【樹木に咲く花へ手を伸ばす少女】
軽やかな筆触で描写される風景。少女らの姿態によって構成される安定的な三角形や、穏やかな風を感じさせる草原の緑色と見事な色彩的調和を示す少女らの衣服の色彩など、本作には注目すべき点が多い。



【軽やかな筆触で描写される風景】

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