Description of a work (作品の解説)
2007/11/12掲載
Work figure (作品図)
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飢えたライオン


(Lion ayant fain se jette sur l'antilope) 1905年
200×300cm | 油彩・画布 | バーゼル美術館(スイス)

素朴派の巨匠アンリ・ルソー随一の大作『飢えたライオン』。画家の全作品の中でも、代表作『』と並び、最も巨大な作品として知られる本作に描かれるのは、一匹の飢えたライオンがカモシカを捕食する場面で、妹ジュリアが前年(1904年)のサロンに出品した規模の大きなタペスリーに触発され、大画面構成による本作を手がけたとされている。本作はパリで行われる(国際的に)最も歴史の古い国際公募美術展≪サロン・ドートンヌ≫に出品され(なおこの年のサロン・ドートンヌにはルソーに注目していた印象派の画家ルノワールのほか、後のフォーヴィスム(野獣派)の大画家アンリ・マティスやアンドレ・ドランなども出品している)、好評を博し、当時の上流階級向け高級新聞≪サロン・ドートンヌ≫に図版と共に取り上げられた。画面中央では一匹のカモシカに飢えたライオンが鋭い爪を立てながら頭部の後ろに噛み付いている。カモシカは脱出しようと抵抗を試みるが、頭部と胴体をライオンに押さえられ身動きが取れない。噛み付かれた背中上部や、(おそらくライオンの爪で傷つけられたのであろう)右脚部、右側部からは鮮血が滴り落ちている。また背後の森林では梟などの鳥達や一匹の豹が木の上からこの情景を静観している。赤々とした太陽が暮れ、ジャングルに深い夜が訪れようとしている本場面の瞑想的であり、思想的でもある独特の雰囲気や表現は画家の作品の大きな特徴でもあり、特筆に値するものである。なお本作の名称『飢えたライオン』は『飢えたライオンは身を投げ出してカモシカに襲いかかる…』と続く長い銘文の冒頭の一句から引用されたものであるほか、本作は20世紀前半に起こった芸術運動のひとつシュルレアリスム(超現実主義)の画家ら、特にドイツ人画家マックス・エルンストに多大な影響を与えたことが知られている。


【全体図】
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カモシカに襲いかかる飢えたライオン。画面中央では一匹のカモシカに飢えたライオンが鋭い爪を立てながら頭部の後ろに噛み付いており、カモシカは脱出しようと抵抗を試みるが、頭部と胴体をライオンに押さえられ身動きが取れない。



【カモシカに襲いかかる飢えたライオン】
木の上で状況を静観する一匹の豹。瞑想的であり、思想的でもある独特の雰囲気や表現が大きな特徴である本作はシュルレアリスム(超現実主義)の画家ら、特にドイツ人画家マックス・エルンストに多大な影響を与えたことが知られている。



【木の上で状況を静観する一匹の豹】
鋭い瞳の一匹の梟と沈む太陽。本作に描かれるのは、一匹の飢えたライオンがカモシカを捕食する場面で、妹ジュリアが前年(1904年)のサロンに出品した規模の大きなタペスリーに触発され、大画面構成による本作を手がけたとされている。



【鋭い瞳の一匹の梟と沈む太陽】

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