2009/01/01掲載
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富嶽三十六景-凱風快晴(赤富士)-1831(天保2)年頃(Clear Day with Southerly Breeze (Thirty-six Views of Mount Fuji)) 39cm×26cm | 横大判錦絵・木版画 | 所蔵先多数 ※「富嶽三十六景」は本来「冨嶽三十六景」と書く。 関連:葛飾北斎作 『富嶽三十六景-山下白雨-』
造形的な美しさを感じさせる富士山の頂。本作は1831年(天保2年)前後に刊行された連作大判錦絵『富嶽三十六景』の中の1点で、夏から秋にかけて年に数回、朝焼けによって富士山が赤く染まる現象、所謂≪赤富士≫の情景を描いた作品である。
【造形的な美を感じさせる富士の頂】
赤々と染まる富士の裾野。富士山の堂々とした雄大な造形性や霊峰としての神秘性、揺るぐことの無い不動性などは富嶽三十六景の中でも群を抜いて優れた出来栄えを示しており、特に本作の極めて純粋な造形に対する視覚的アプローチには、北斎の類稀な才能を感じずにはいられない。
【赤々と染まる富士の裾野】
陰影すらない平面的な山麓の表現。4枚の版木と7度の摺りで完成する本作で用いられる赤色(富士の山頂から中腹部分)、緑色(富士の山麓部分)、青色(鰯雲のかかる空)の明快な階調の変化は観る者に強烈な印象を残すと共に、一服の清涼感と心地よさを与えることに成功している。
【陰影すらない平面的な山麓の表現】 ベロ藍を用いた清々しい紺碧の空。ベロ藍(ベロリン藍)とも呼ばれる、当時、西洋からの輸入され流行となっていたベルリアン・ブルーの鮮やかな色彩は絵師の絶頂期の作品に相応しい輝きを放っている。
【ベロ藍を用いた清々しい紺碧の空】 |