Description of a work (作品の解説)
2009/01/01掲載
Work figure (作品図)
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富嶽三十六景-凱風快晴(赤富士)-

 1831(天保2)年頃
(Clear Day with Southerly Breeze (Thirty-six Views of Mount Fuji))
39cm×26cm | 横大判錦絵・木版画 | 所蔵先多数

稀代の天才絵師・葛飾北斎による連作錦絵『富嶽三十六景』中で最も有名な作品のひとつ『凱風快晴(赤富士)』。本作は北斎が1823(文政6)年頃から取り組み始め、1831年(天保2年)前後に刊行された、冨嶽(富士山)を画題に主板36図及び追加分10図(通称裏富士)で構成される連作大判錦絵『富嶽三十六景』の中の1点で、夏から秋にかけて年に数回、朝焼けによって富士山が赤く染まる現象、所謂≪赤富士≫の情景を描いた作品である。赤富士は南風の吹く晴天の朝方に起こる現象で、『凱風快晴(がいふうかいせい)』という本作の名称はそこに由来している(※凱風は南風を意味する)。画面右側に悠々と聳える富士山を、左側に巻積雲(鰯雲)が流れる紺碧の空を配するという非常に簡素で単純な構図を用いながら、富士山の堂々とした雄大な造形性や霊峰としての神秘性、揺るぐことの無い不動性などは富嶽三十六景の中でも群を抜いて優れた出来栄えを示しており、特に本作の極めて純粋な造形に対する視覚的アプローチには、北斎の類稀な才能を感じずにはいられない(※富嶽三十六景で山の姿そのものを主題に置いている作品は本作と『山下白雨』の2点のみである)。また4枚の版木と7度の摺りで完成する本作で用いられる赤色(富士の山頂から中腹部分)、緑色(富士の山麓部分)、青色(鰯雲のかかる空)の明快な階調の変化は観る者に強烈な印象を残すと共に、一服の清涼感と心地よさを与えることに成功している。中でもベロ藍(ベロリン藍)とも呼ばれる、当時、西洋からの輸入され流行となっていたベルリアン・ブルーの鮮やかな色彩は絵師の絶頂期の作品に相応しい輝きを放っている。なお富嶽三十六景の中で特に人気の高い本作と『山下白雨』、『神奈川沖浪裏』の3作品は三役と呼ばれている。
※「富嶽三十六景」は本来「冨嶽三十六景」と書く。

関連:葛飾北斎作 『富嶽三十六景-山下白雨-』


【全体図】
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造形的な美しさを感じさせる富士山の頂。本作は1831年(天保2年)前後に刊行された連作大判錦絵『富嶽三十六景』の中の1点で、夏から秋にかけて年に数回、朝焼けによって富士山が赤く染まる現象、所謂≪赤富士≫の情景を描いた作品である。



【造形的な美を感じさせる富士の頂】
赤々と染まる富士の裾野。富士山の堂々とした雄大な造形性や霊峰としての神秘性、揺るぐことの無い不動性などは富嶽三十六景の中でも群を抜いて優れた出来栄えを示しており、特に本作の極めて純粋な造形に対する視覚的アプローチには、北斎の類稀な才能を感じずにはいられない。



【赤々と染まる富士の裾野】
陰影すらない平面的な山麓の表現。4枚の版木と7度の摺りで完成する本作で用いられる赤色(富士の山頂から中腹部分)、緑色(富士の山麓部分)、青色(鰯雲のかかる空)の明快な階調の変化は観る者に強烈な印象を残すと共に、一服の清涼感と心地よさを与えることに成功している。



【陰影すらない平面的な山麓の表現】
ベロ藍を用いた清々しい紺碧の空。ベロ藍(ベロリン藍)とも呼ばれる、当時、西洋からの輸入され流行となっていたベルリアン・ブルーの鮮やかな色彩は絵師の絶頂期の作品に相応しい輝きを放っている。



【ベロ藍を用いた清々しい紺碧の空】

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