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聖母子と幼児聖ヨハネ 1516年頃
(Madonna con il Bambino e san Giovannino)
48×37cm | Oil on panel | マドリッド, プラド美術館 |
世界有数の作品が数多く揃うマドリッドのプラド美術館が所蔵するエリザベッタ・ファルネーゼ・コレクション由来の名作『聖母子と幼児聖ヨハネ』。コレッジョ初期の代表作でもある本作は、聖母マリアと幼子イエスという極めて古典的な聖母子像に幼児の姿をした洗礼者聖ヨハネを描く、ルネサンス期よりの典型図とされてきた構図であるが、洞窟の入り口から深く射し込む光の中に浮かび上がる登場人物や前景の植物、聖母マリアのやわらかい表情などから、巌窟の聖母を始めとするレオナルド・ダ・ヴィンチの影響が随所に見られる。しかし暗い洞窟内に鎮座する聖母の象徴でもある青い衣服に身を包んだ聖母マリアのやわらかく編まれた髪や、幼さ、甘美さをも感じさせる表情は、後にコレッジョの最も得意とする独自の表現方法ともなった。ルネサンスを境に、聖母子像が描かれる場合は、厳格な神々しさは消え、幼子や聖母が持つ純真さや柔らかさが表現されるようになり、本作はそれを理解する上で、最も優れた作品のひとつでもある。
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