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悔悛するマグダラのマリア (Magdalena penitente)
1577年頃 | 107×102cm | 油彩・画布 | ウースター美術館 |
マニエリスム最後にして最大の画家エル・グレコの代表的な宗教人物画のひとつ『悔悛するマグダラのマリア』。マリア信仰の深い地であるスペインで描かれた本作は題名の示すとおり、イエスによって自らの罪を諭され、悔悛するマグダラのマリアを描いたものであるが、その表現はそれまでの典型を大きく逸脱し、マグダラのマリアの憂いを含む意味深げな視線や表情など、エル・グレコが持つ独特の世界観によって、マニエリスム特有の洗練された不安定感がよく表れている。極めて独創的な画風が大きな特徴のエル・グレコであるが、本作において、上方を見上げる構図や憂いを含む表情などは、ヴェネツィア派の巨匠ティツィアーノの描いた≪悔悛するマグダラのマリア≫との幾つかの類似点も指摘されている。本作に描かれる≪マグダラのマリア≫のアトリビュートは髑髏の他、イエスの足に塗ったとされる香油や十字架像などが挙げられる。また、その着衣は愛と悲しみを示す朱色か、誠実を示す紺色で描かれた。また、この主題は当時より人気が高かったため、エル・グレコは本作の他にも≪悔悛するマグダラのマリア≫を数点描いている。
関連:ブダペスト国立美術館所蔵 『悔悛するマグダラのマリア』
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