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聖マウリティウスの殉教 1580-1582年
(Martirio de san Mauricio)
448×301cm | Oil on canvas | エル・エスコリアル修道院 |
エル・グレコの残した偉大なる傑作、当時欧州屈指の強国であったスペイン国王フェリペ2世からの依頼により、エル・エスコリアル修道院のための大祭壇画『聖マウリティウスの殉教』。マニエリスム初期の代表的な画家ポントルモも≪一万人のキリスト教徒の殉教≫として描いた、本作の主題『聖マウリティウスの殉教』は紀元前三世紀、デーベ地方に駐在していた、隊長聖マウリティウスを始めとするキリスト教徒兵士1万1千人が、あらゆる異教の儀式に参加することを拒絶したため、皇帝マクシミリアヌスの命によって虐殺された場面を描いたものであるが、本作の大きな特徴である奇抜な構図と非現実的な色彩は祈る気が削がれると(本作を見た)依頼主である国王フェリペ2世の不興を買い、国王は別の画家へ注文をし直し、以後エル・グレコは宮廷への出入が閉ざされることになった。奏楽とオリーブの葉で作られた冠を手にする天使たちによって導かれる殉教者たちの、父なる神の威光に包まれる姿は、グレコ独特の色彩によって鮮やかに表現されている。
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