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キリストの復活 (Resurreccion) 1605-1610年頃
275×127cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド) |
エル・グレコが1600年代当初に手がけた宗教画作品の代表的作例のひとつ『キリストの復活』。確証はないものの、ドーニャ・マリア・デ・アラゴン学院礼拝堂の大祭壇画衝立の一部であったとも推測されている本作に描かれるのは、磔刑に処され絶命し石墓に埋葬された主イエスの亡骸が、三日後の早朝、死に勝利し復活を遂げるという、新約聖書内で特に重要視される主題のひとつ≪キリストの復活≫で、画面上部に配される勝利の旗を持ち復活した主イエスは瞬間の静寂すら感じさせる神々しい姿とは対照的に、画面下部の復活を目撃する(イエスの墓を見張っていた)兵士らは、巨匠ミケランジェロの表現に通じる運動性の非常に高い肉体表現と、マニエリスム様式を超えバロック的な様式に近い、誇張と独創性に溢れた構図的展開が大きな特徴である。本作に登場する人物へ示される、この肉体的表現は画家の現存する唯一の神話画である『ラオコーン』にも示されており、本作はエル・グレコの晩年期における表現手法の変化や特徴を研究する上でも、非常に重宝されている。なお、同サイズで半円形アーチの額縁処理がなされている点などから同美術館が所蔵する『聖霊降臨』の対画であったと考えられている。
関連:対画『聖霊降臨』
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