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トレド眺望 (Vista de Toledo) 1595-1610年頃
121×109cm | Oil on canvas | メトロポリタン美術館 |
エル・グレコ作『トレド眺望』。エル・グレコが36歳の時に訪れて以来、以後、活動拠点の中心となった、かつてスペインの首都として栄えた古都トレドが、始めて風景画として描かれた作品でもある本作は、エル・グレコの大きな特徴である筆跡が残る画風に、深緑と濃青によって表現される独特の世界観から、トレドという街を、陰鬱でありながら、印象的にも、神秘的にも写している。また本作は、待望であった王室からの依頼により描いた、画家随一の力作である『聖マウリティウスの殉教』が国王フェリペ2世の不評を買い、失意の後に戻ってきたトレドの街にエル・グレコの心情の投影を感じることができる。暗い雲の影に射し込む強烈な光は、深緑と濃青によって表現される本作品において、最も印象的な効果を生み出している。エル・グレコの活動拠点の中心となったトレドの街では本作や『聖衣剥奪』など数々の代表作が生まれた。本作の毛羽立つような強い筆跡を残す画風は、印象派の作風に近く、20世紀初頭、印象派の画家達や、ピカソらによって、その独自性が再評価された。また街の入り口にはアルカンタラ橋が、画面右下の川の流れ部分には画家のサインが記されている。
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