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死せるキリストと天使たち
(Cristo morto e gli angeli) 1527年
133.4x104cm | 油彩・板 | ボストン美術館 |
イタリアの優れた芸術家の生涯を綴ったヴァザーリの著書≪芸術家列伝≫によると、ローマ時代、トルナブオーリ司教のために描かれた作品とされるロッソ・フィオレンティーノの名作『死せるキリストと天使たち』。長い間行方が不明であったが1958年に再発見され、その後ボストン美術館が購入した本作の大きな特徴として第一に挙げられるのは、あたたかく、かつコントラストの強い光によって浮かび上がるキリストの洗練された肉体造形表現で、それまでの稜線による造形区分を特徴していた角張った造形を捨てて、前バロックとも取れる精巧でドラマティックな表現は画家ロッソ・フィオレンティーノの新たな一面が垣間見れる。やわらかくも、強い光で浮かび上がるキリストの裸体の表現は、ミケランジェロの影響も幾つか認められており、細部に至るまで精密に描写されている。また豪華に巻かれた頭髪と若々しく紅潮した頬、端正な顔立ちなど、随所に天使たる特徴を示しているが、この作品全体としては、死せるキリストの伝統的な構図は殆ど見受けられない。
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