Description of a work (作品の解説)
2007/11/10掲載
Work figure (作品図)
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誹謗(ラ・カルンニア)

 (La Calunnia) 1495年頃
62×91cm | テンペラ・板 | ウフィツィ美術館(フィレンツェ)

フィレンツェ派最大の巨匠サンドロ・ボッティチェリが晩年に手がけた特異的寓意画作品『誹謗(ラ・カルンニア)』。本作は古代ギリシアの画家アペレスが描いた失われた作品『誹謗』を、初期ルネサンスの人文主義者でレオン・バッティスタ・アルベルティの「絵画論」に基づき再現した作品である。ボッティチェリは当時、フィレンツェを支配していたメディチ家を批判し、メディチ家当主ロレンツォの死後(1492年)、フィレンツェ共和国を宣言し、失墜したメディチ家に替わり、政治顧問として神政政治(神権政治)を執り行ったドミニコ会の修道士≪ジロラモ・サヴォナローラ≫に強い思想的影響を受け、その表現様式も大きく変化させていった。本作はその頃に制作された作品で、かつて(1480年代)のボッティチェリ独特の甘美性を携えるルネサンス的な表現は消え失せ、神秘的な瞑想と緊張感に溢れる硬質的な表現が最も大きな様式的変化として本作に示されている。本作の主題≪誹謗≫の解釈は諸説唱えられているものの、現在では@サヴォナローラに傾倒した画家本人へ対する誹謗への抗議、Aサヴォナローラの厳格な政治的態度に対する誹謗への抗議、B画家に対してかけられた同性愛疑惑に対する抗議と、3つの説が有力視されており、何れにしても誹謗に対する画家の個人的な動機が本作の制作に深く関連していると推測されている。16世紀の建築様式の回廊を舞台に、画面中央では左手に松明を持ち、右手で≪無実≫の髪を曳き≪不正≫の前に引きずり出す≪誹謗≫の擬人像は、≪憎悪≫の擬人像である黒衣の男に手を引かれている。また≪欺瞞≫と≪嫉妬≫の擬人像は≪誹謗≫の髪を忙しなく整えている。画面右側ではロバの耳をしたミダス王に扮する審問官≪不正≫の擬人像が、≪猜疑≫と≪無知≫の擬人像に耳打ちされ、≪無実≫を断罪している。さらに画面左側では天を指差し上を仰ぎ見る裸体の≪真実≫を、黒衣の老婆≪悔悟≫が訝しげに窺い見ている。なお画家兼建築家であり≪美術家列伝≫の著者としても知られるジョルジョ・ヴァザーリによれば、本作はかつて同地の貴族ファビオ・セーニが所有していたと記録されている(現在はウフィツィ美術館が所蔵)。

関連:誹謗(ラ・カルンニア)内容詳細図


【全体図】
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≪無実≫の髪を曳き、≪不正≫の前に引きずり出す≪誹謗≫。本作は古代ギリシアの画家アペレスが描いた失われた作品『誹謗』を、初期ルネサンスの人文主義者でレオン・バッティスタ・アルベルティの「絵画論」に基づき再現した作品である。



【不正の前に無実を引きずり出す誹謗】
誹謗に髪を曳かれる裸体の≪無実≫。本作の主題≪誹謗≫の解釈は諸説唱えられているものの、現在では@サヴォナローラに傾倒した画家本人へ対する誹謗への抗議、Aサヴォナローラの厳格な政治的態度に対する誹謗への抗議、B画家に対してかけられた同性愛疑惑に対する抗議と、3つの説が有力視されており、何れにしても誹謗に対する画家の個人的な動機が本作の制作に深く関連していると推測されている。



【誹謗に髪を曳かれる裸体の無実】
ロバの耳をしたミダス王に扮する審問官≪不正≫。画家は、フィレンツェを支配していたメディチ家を批判し、メディチ家当主ロレンツォの死後(1492年)、政治顧問として神政政治(神権政治)を執り行った≪サヴォナローラ≫に強い思想的影響を受け、その表現様式も大きく変化させていったことが知られている。



【ロバの耳をしたミダス王に扮する不正】
天を指差し上を仰ぎ見る裸体の≪真実≫。かつて(1480年代)のボッティチェリ独特の甘美性を携えるルネサンス的な表現は消え失せ、神秘的な瞑想と緊張感に溢れる硬質的な表現が最も大きな様式的変化として本作に示されている。



【天を指差し上を仰ぎ見る裸体の真実】

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