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足なえたち (Cripples) 1568年
18.5×21.5cm | 油彩・板 | ルーヴル美術館(パリ) |
16世紀のネーデルランド絵画史最大の巨匠ピーテル・ブリューゲルを代表する寓意的作品のひとつ『足なえたち』。本作は二肢マヒの為に歩行の手段として松葉杖を使用する者≪足なえ≫たちを乞食の姿で描いた作品で、五人の乞食らはそれぞれ王、司教、兵士、市民、農民という社会的階級層を暗示させる帽子を着用するほか、体には精神の俗化の象徴である狐の尻尾を無数に身に着けた姿は、(一般的に社会的弱者の姿を用いて)人間が見せる偽善的行動への批判、特に聖職者の偽善や貧欲への痛烈な批判だと解釈されている。このような社会的な権力層に対する批判が込められた寓意的な表現は、ピーテル・ブリューゲルの作品の大きな特徴でもあり、本作はその性格が強く示された典型のひとつとして広く知られている。また本作に描かれる足なえ(の乞食)たちは、聖書の中で聖人らがそれを癒す逸話としてしばしば登場するなど一般的な題材であったほか、画家が1559年に手がけた代表作『謝肉祭と四旬節の喧嘩』の中にも描かれている。
関連:ピーテル・ブリューゲル作『謝肉祭と四旬節の喧嘩』
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