■ |
謝肉祭と四旬節の喧嘩
(The Fight between Carnival and Lent) 1559年
118×164.5cm | 油彩・板 | ウィーン美術史美術館 |
16世紀ネーデルランド絵画史における最大の巨匠ピーテル・ブリューゲル初期の代表作『謝肉祭と四旬節の喧嘩』。風刺的寓意画として知られる本作は、主イエスの死からの復活を記念する祝日≪復活祭(イースター)≫の前の40日間、受難者イエスの死を偲び(伝統的に)肉食など食事の節制と祝宴の自粛をおこなう修養期間≪四旬節(レント)≫と、四旬節に先立ち(一週間から数週間)肉食など禁則事項との告別をおこなう祭事≪謝肉祭(カーニバル)≫を題材に人間の利己と愚考に満ちた姿を描いた作品で、一般的にはカトリック(四旬節)とプロテスタント(謝肉祭)の対立を表現したものと解釈される。これは本主題は中世以来、文学者たちにも好まれた題材で、当時の人文学者たちは(当時の)欧州の混迷はカトリック(四旬節)とプロテスタント(謝肉祭)の対立にあると指摘していたことを典拠にしたと推測えられている。画面下部中央に描かれる樽にまたがり豚の頭や肉の串焼きを手にする男は≪謝肉祭(カーニバル)≫の擬人像と、二匹の鮫を乗せたしゃもじを手に樽の男と対峙する痩せた老婆は≪四旬節(レント)≫の擬人像とされるほか、多大な影響を感じさせるヒエロニムス・ボスの代表作『快楽の園』のような高視点からの群集構成によって表現される本作は、中央から左を≪謝肉祭(カーニバル)≫、右を≪四旬節(レント)≫とし、それぞれに関連する(200種類以上の)様々な行事・行為が画面内へ描かれている。なお本作の題名は16世紀後半の画家で美術史家でもあるカレル・ヴァン・マンデルによる北欧最初の美術史「画家列伝」に由来する。
|