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農民の踊り (The Peasant Dance) 1568年頃
114×164cm | 油彩・板 | ウィーン美術史美術館 |
大画家ピーテル・ブリューゲルを代表する作品のひとつ『農民の踊り』。本作に描かれるのは画家随一の傑作とされる『農民の婚宴』と同様、農民の日常生活における集団的風景を描いたもので、村の聖堂の開基祭を祝う縁日の様子を、巨大な人物描写などイタリア絵画風のモニュメンタル的な画面構成によって表現しているのが大きな特徴である。本作において、ブリューゲルは単に農民の日常風景を捉え描いたのではなく、画面右端に描かれた聖祭の象徴である聖母マリアの絵画に背を向け、暴飲暴食や情欲に溺れる農民の姿や、怠慢や憤怒、虚偽を露わにする農民の姿や象徴を大きく取り上げることで、道徳的な戒めを表している。このようなアイロニー的な表現はブリューゲル作品の最も重要な表現のひとつであり、本作は画家後期の様式による作品の代表的作例として広く知られている。なお一部の研究者からは同時期に制作され同サイズであることから『農民の婚宴』と一対であったとする説が唱えられている。
関連:ピーテル・ブリューゲル作『農民の婚宴』
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