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農民の婚宴(The Peasant Wedding)1568年
114×168cm | Oil on panel | ウィーン美術史美術館 |
農民を描いた画家ブリューゲルの傑作『農民の婚宴』。本作は画家がキリスト教の主題である≪カナの婚宴≫から着想を得て描かれたと思われ、構図的に見ても類似する点が多々指摘されている。また本作は、完成した後に、何らかの理由から下部が切断されており、本来はそこに署名、年記などが記されていたと考えられている。なお、一部の研究者からは同時期に制作され同サイズであることから『農民の踊り』と一対であったとする説が唱えられている。この喜ばしく愉快に進行する婚宴の主役のひとりである花嫁の姿が特徴的な本作など、画家は生涯において婚宴を題材に数点の作品を手がけているが、花嫁は判別されても、もう一人の主役である花婿が判別できない作品が存在する。本作もその中の一点。その他、喜ばしい婚宴の最中、部屋の隅で密かに話をする修道士と村の領主が描かれており当時から規律や戒律を重んじる両者にとっては、このような宴は推奨されるものではなかったことが窺える。なお本作を含め、画家が農民を描いた作品は寓意的な意味を持つ作品も有名だが、当時の農民の実態を描いた作品も秀逸なものが多い。
関連:ピーテル・ブリューゲル作『農民の踊り』
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